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仮想通貨(暗号資産)の財産調査(財産分与等)

月曜日, 8月 22nd, 2022

離婚事件や相続事件等で、相手方の財産隠しが疑われる場合、弁護士会や裁判所等の手続きを通じて財産調査をしていくことになります。仮想通貨についても、同様の財産調査が必要になることが想定されますが、銀行預金や証券口座とは調査方法等が異なる部分があるので、そのあたりについて書きます。



仮想通貨の3つの保管場所



仮想通貨の保管場所としては、主に次の3つがあります。



  1. 国内の取引所
    bitFlyer、コインチェック、GMOコイン、DMM Bitcoin、FTX Japan、BITPOINT、LINE BITMAX等
  2. 海外の取引所
    Binance、Bybitl等
  3. ウォレットで管理


3つのそれぞれについて、保管場所の発見方法や口座残高の確認方法等が異なります。



仮想通貨特有の財産調査方法



仮想通貨特有の調査方法として、エクスプローラやスキャンという、ブロックチェーン上の取引を調査するサイトがあります。ブロックチェーン(パブリックチェーン)は、すべての取引履歴は公開されています。それゆえ、アドレスが特定できれば、その取引履歴、現在残高等を調査することができます。



いくつか例を書きます。各サイトごとに見やすさや入手できる情報が異なるようなので、目的とする通貨名+エクスプローラ、目的とする通貨名+スキャン で検索していくつか見てみることをおすすめします。





いくつかの補足事項です。



  • 記載されているのは、あくまでアドレスであり、本人の名前や送金先取引所名が書かれているわけではない。
  • 取引所のアドレスは、他の利用者との共通アドレスのことが多い。本人のアドレスA→取引所のアドレスBへ送金となっている場合。アドレスBの残高が本人の口座残高というわけではない。
  • 大量に取引がなされているアドレスは取引所等、個人のものでない可能性が高い。


仮想通貨:国内の取引所の財産調査



国内の取引所は、仮想通貨の3つの保管場所の中では、銀行預金や証券口座の調査に近いといえます。



仮想通貨:国内の取引所の発見方法



日本円と仮想通貨を交換できるメインルートは国内の取引所です。それゆえ、仮想通貨を保有している人は国内の取引所に口座を可能性が高いです。
国内の取引所の取引所への入出金は、銀行口座を介することが多いです。コンビニ入金等もできますが、手数料が高かったり大きな額の移動には適していないので、銀行口座の取引履歴の分析からの口座発見がまず第一となります。



また別のアドレスがわかっているときには、その送金先のアドレスをエクスプローラやスキャンで調査するとわかることもあります。例:イーサスキャンのComments欄のやりとりでbitflyerの口座らしいことがわかる



その他、メールの内容、2段階認証でのスマートフォンへのメッセージ等を把握できる場合は、そこから見つけることもできるかもしれません。



仮想通貨:国内の取引所への調査事項



国内の取引所は、それ以外の仮想通貨保存場所を探していく起点となります。そこで、その国内取引所での現在の仮想通貨残高だけでなく、その口座への仮想通貨の入出金状況の照会をすることも肝要となります。
入金元や出金先は基本的にはブロックチェーン上のアドレスになります。しかし、最近ではトラベルルールにより出金先の情報の登録を義務付けていることも多いと思われるので、仮想通貨の受取人情報等の取得を求めることが肝要となります。参考:bitflyerでのトラベルルール



というのは、アドレスがわかっても、それが本人の口座なのか、他人なのか、他の取引所なのかといったことの特定は困難になってしまうことが多いですが、受取人情報の記載があれば、その特定が容易になるからです。



仮想通貨:海外の取引所の財産調査



国内の取引所の利用のみだと、仮想通貨の様々な利用をすることが困難なので、Binance等の海外の取引所の口座も持っている場合が多いといえます。
銀行預金だと、日本に支店のない海外銀行の口座を開設することはあまりなく、海外銀行の財産調査は実務上あまり出てきません。しかし、仮想通貨の海外取引所はインターネットで簡単に口座が開設できるので、今後、実務的に問題になる可能性が高いといえます。



仮想通貨:海外取引所の発見方法



送付先のアドレスをもとに上記のエクスプローラやスキャンのサイトを調査すると、Binance等はアドレスにBinanceというタグのようなものがついていてわかることがあります。例:イーサスキャンでのバイナンスのマーク付アドレス
このアドレスは他の利用者との共通アドレスの可能性が高いです。エクスプローラやスキャンで利用履歴や現在残高を確認でき、残額が極めて高額だったり、利用が頻繁だったりすれば共通アドレスの可能性が高いです。
それゆえ、その取引所に口座がある可能性はわかっても残高まではわからない可能性が高いです。



クレジットカードで仮想通貨の購入をしている可能性があるので、カードの明細から判明する可能性もあります。



国内取引所から送金先として、自分の名前での海外取引所として登録されていれば、口座をもっている可能性が高いといえます。



その他、メールの内容、2段階認証でのスマートフォンへのメッセージ等を把握できる場合は、そこから見つけることもできるかもしれません。



仮想通貨:国内の取引所への調査事項



国内の取引所であれば、ある程度絞り込めた段階で、弁護士会経由での照会や裁判所からの調査嘱託によって調査可能ですが、海外取引所については、回答がなされるかどうかの見通しは不明です。



ウォレットで管理している仮想通貨の調査方法



ウォレットは、暗号資産を自ら管理する方法(ただし、取引所のアプリとしてのウォレットもある)で、chrome等のブラウザ、スマートフォンのアプリ、USBにさす形等が多いです。単に秘密鍵をメモしたものをペーパーウォレットと呼ぶこともあります。
基本的には、取引所等の第三者が関与していない場合について、ここで記載します。



仮想通貨:ウォレット管理アドレスの発見方法



国内取引所からの送金先アドレス、エクスプローラ等を利用しての他の本人アドレスからの送金先アドレスとして把握できることが多いです。
本人が使っているウォレットを操作することができれば、そのアドレスを見ることはできます。ウォレットに使っているソフトが判明しても、どこかに照会をしてアドレスを聞き出すということはできません(取引所ウォレットを除く)。



なお、ウォレットは一般的に、既にインストール済みのものを起動するにはパスワード、新たなところにインストールするには、シードフレーズという12語または24語の英単語を利用することが多いです。
相続事件等で、被相続人が暗号資産を管理していたことは分かっているが内容が不明のとき、シードフレーズが判明すれば、相続人全員の同意のもとウォレットを使えるようにでき、アドレス等も把握することができます。シードフレーズは、通常のパスワードと違い暗記は難しいですし、パスワード管理ソフト等にも入れにくいので、どこかにメモが残っている可能性が十分にあるといえます。



仮想通貨:ウォレットアドレスの調査



ウォレット管理暗号資産の特徴としては、本人だけが管理しているので第三者への照会という手法を利用できない反面、アドレスが判明すればエクスプローラやスキャンの利用によって、現在残高やすべての取引履歴を把握できるとうことです。ただし、本人の名前等は記載されていないので、当該アドレスを本人のものであることを、エクスプローラ等から特定することは通常できません。





その他仮想通貨調査事項の補足事項



JPYCの発見法法



JPYCという日本円ステーブルコインサービスがあります。
これは暗号資産ではなく前払式支払手段という位置づけとのことです。
ただ、JPYCを購入した上で、sushisuwapというDEX(分散型取引所)を利用すれば、JPYCと仮想通貨を交換できそうです。なので、国内取引所を経由せず、JPYC経由で日本円と仮想通貨を交換することもできそうです。
JPYCでは銀行振込がスタートのようなので、銀行口座の明細から探していくことになります。
その上で、日本国内の業者なので弁護士会経由または裁判所経由での調査をしてくことになろうかと思います。