ブロックチェーンの種類(法的問題の前提)
金曜日, 8月 12th, 2022ブロックチェーン上の法的問題の検討にあたっては、問題となった仮想通貨なりNFTなりゲームなりDAOなりが、どのブロックチェーンを利用しているのかを把握することが重要です
その他、自らブロックチェーン上のアプリを立ち上げようと考えるとき、仮想通貨やNFTの購入を考えるときも、それぞれのブロックチェーンの特徴は重要な考慮要素となります。
パブリックチェーンかプライベートチェーン・コンソーシアムチェーンか
まずはイーサリアム等のパブリックチェーン上なのか、特定企業の中でのプライベートチェーンや企業グループ等のコンソーシアムチェーンかの区別が重要です。後者の場合、ブロックチェーン特有の法的問題をそれほど考慮せず、従来型の議論の枠組みで考えることができる余地が高いです。
区別の仕方
パブリックチェーンであれば、通常、そのチェーンの利用料としてイーサ(ETH)等のネイティブトークンの利用がガス代として必要となります。そのためにメタマスク等のウォレットの準備が必要となります。
逆にこのような面倒な手続きが必要がなしに、NFT等が購入できるとしたらプライベートチェーン等の可能性が高いといえます。たとえば、ID(メールアドレス等)とパスワードで本人確認した上でクレジットカード等で日本円で購入できる場合です。
なお、パブリックチェーン上の仮想通貨等だとしても、いわゆる取引所(※)で暗号資産を購入した場合はウォレット等は必要なくIDとパスワードでの管理になります。取引所で仮想通貨を保管している限りは、多くの場合、ブロックチェーン特有の法的問題はあまり発生せず、従来型の議論の枠組みで対応できることが多いと思われます。
※コインチェック、ビットフライヤー、ビットバンク、GMOコイン等です。
区別の理由
パブリックチェーンかプライベートチェーンかの区別が重要となる次の理由です。
ブロックチェーンを運営するには相当程度のコストがかかります。
仮想通貨やNFTを移転する際には、ブロックチェーン上に新たな記載をすることになり、そのためのコンピュータの稼働コストが発生します。そのコストを利用者がガス代として支払うのであれば運営者は必ずしも必要ありません。しかし、利用者がコストを支払わないのであれば、運営者がそのコストを支払い続ける必要があるため、運営者の存在が必須になります。運営者が想定されるのであれば、ブロックチェーン特有の議論に入らずに、運営者に対する債権としてとらえる余地が大きくなります。
たとえば、LINE Blockchainでは、NFTを購入した人が、NFT移転する際のガス代が不要です。その反面、運営者にはクラウドサービスのような料金表が提供されています。このサービスにもとづいてNFTサービスを提供している場合、提供者は月額の利用料を支払い続ける必要があります。
これがイーサリアム上のNFTの場合、はじめにNFTを作成(ミント)するときにガス代はかかります。その後はNFTを移転したい人がガス代を負担していくことになります。なので、はじめにNFTを作成した人等の運営者による継続的な費用が必須ではなく、NFTを誰かが提供していると考えることが難しくなります。債権というよりは、ブロックチェーン上の電子的物体に近くなります。
パブリックブロックチェーンの区別
台数による信頼性
ブロックチェーンの信頼性は、ブロックチェーンを構成するコンピュータ(ノード)の台数による部分が大きいです。
多数のノードが存在するビットコインやイーサリアムは信頼性が高いといえます。
仮にスピードが早くて、ガス代が安いブロックチェーンを作り上げたとしても、それを構成するコンピュータが大量に集まってくれていないと信頼性が低くなります。
というのは、ブロックチェーンの信頼性は、コンピュータ等の51%を奪われると損なわれる可能性が高いからです。
ただし、この問題は誰でもノードに加わることができるという特性にもとづいています。誰でも加わることができるので、悪意あるノードが加わるのを防ぐことができないからです。
そこで、BNBチェーン(バイナンススマートチェーン)のように、誰でもノードに加わることとはできないという方式をとっている場合もあります。この場合、ブロックチェーンの信頼性は、このブロックチェーンを提供しているバイナンスの信頼性に依存することになります。
この意味での信頼性の高さは、そのブロックチェーンのネイティブトークンの時価総額である程度把握することができます。時価総額が小さいブロックチェーンは、他の性能が高くても信頼性の点で弱いといえます。
ガス代の安さやスピード
信頼性の点ではイーサリアムに軍配があがります。イーサリアムはガス代が高くちょっとした操作にも相応の金額がかかります。2021年の終わり頃に色々ためした限りだと、送金で何百円、ちょっとした操作で何千円かかる感じでした。これがソラナのブロックチェーンだと送金で1円も手数料がかからないようです。
また、スピード面でもイーサリアムより早いとするものが多くあります。
ネイティブトークンの入手の容易性
イーサリアムを利用するにはイーサ(ETH)、ソラナを利用するにはソラナ(SOL)、バイナンススマートチェーンを利用するにはBNB、ポリゴンを利用するにはMATIC等のネイティブトークンといわれる仮想通貨が必要です。
イーサであれば、日本の取引所でも容易に入手できます。しかし、2022年8月時点で、ソラナやMATICは、ようやく買えるところが一つ2つでてきた程度。BNBは買えるところはなさそうです。こういったものを買うには、日本の取引所から海外の取引所に一旦仮想通貨を送金し、海外の取引所の購入するしかないといえます。
入手困難なネイティブトークンが必要なブロックチェーン上で動くサービスは、日本の顧客には提供しにくくなります。
パブリックブロックチェーンの現状で言うと、入手しやすいが利用料が高すぎて提供が難しいイーサリアムか、料金は安いがネイティブトークンの入手が困難なソラナやBNBといった状況になってしまっています。
日本でのNFTのサービスがパブリックブロックチェーンではなく、プライベートチェーンになりがちな理由の一端はここにあるのかもしれません。
マニュアル等の充実
みずからブロックチェーンを利用して何かサービスを提供しようとする場合、マニュアルやサンプルコードの充実は重要です。その点では、イーサリアムが圧倒しています。
バイナンススマートチェーン等では、イーサリアム互換(EVM互換)ということで、イーサリアムで動くコードを利用できることになっています。イーサリアム互換でないと、開発の難易度は高くなるといえます。
あらたなブロックチェーンが出てきたといったときは、そのブロックチェーンがEVM互換なのかはどうかは、その後利用者を増やせるかどうかについて重要な影響があります。