不可解
ウイルスは見えないし,臭いわけでもない。つまり,人間の認識構造は,ウイルスを認識できるようにはなっていません。
それ以外にも,人間には,わかっても良さそうだけど,認識できないことがたくさんあります。
10%と1%と0.01%の確率の違いも,うまく認識できません。
現状,日本のウイルス感染者は,1万人に1人程度(つまり0.01%)。で,発見された人は既に適度に隔離されていると思いますので,町中に未発見の感染者が同程度いるとして,感染者は1万人に1人。その1人から感染する人数は数人。つまり,今感染するためには,1万人に1人に出会って,その人が感染期間中に接触した人の中で,濃厚接触度上位3人以内に入る必要がある。という状況です。
1万分の1の可能性でいうと,40代の人が,何らかの理由で1ヶ月以内に死んでしまう可能性という確率です。つまるところ,可能性はゼロではないが,そのような可能性まで考えて行動はしないという確率です。
ところが,10人乗ったエレベーターで咳でもされようものなら,恐怖に身が震えてしまいます。仮に,10人に一人の割合で感染しているのであれば,もう日本中で1千万の人が感染していることになります。その上で,現在の死亡者数,重傷者数ということであれば,危険性はとても小さく,ただの風邪とほとんど変わらないということになります。うつったって大したことないはずです。
現実の感染者数は,1万人に1人か,5,6人に1人かの中間的なところにあるのでしょうが,いずれにしろ,その中間点で危険が急に高まるということはないと思われます。
つまるところ,10%であれ,0.01%であれ,「可能性はゼロではない」という定性的表現でまとめあげられて,頭の中で同じものと扱われてしまう。その結果,0.01%を前提にした危険性と,10%を前提とした感染の蔓延がつながってしまうものと思われます。
そうは言っても,「知り合いの知り合いで感染者が出ている」んだから,身近なところに迫っていることは確かだ,と思うかもしれません。
今度は,人間は指数関数的な状況が理解できないという話になります。指数関数というのは,○乗というところがxになるやつで,2の1乗=2,2の2乗=4,2の3乗=8というやつです。このあと急激に上がっていきますが,それが予想以上に上がっていってわからなくなります。また,これが2より数字が大きくてもわからなくなります。
仮に知り合いが100人+αいるとします。そうすると知り合いの知り合いは1万人いることになります(αを共通の知人とします)。そうすると,知り合いの知り合いというだけで,人口1億の社会では,1万人に1人に到達してしまいます。
大抵の人は,知り合いの知り合いの知り合いには,超有名人がいるものですが, 知り合いの知り合いの知り合いであれば100万人いることになり,日本に100人しかいない超有名人に辿り着いてもおかしくないわけです。
これは「馬鹿なヤツはこういうことが分からない」という話ではなく,人間の認識とはこういうものだということです。目が悪いからウイルスが見えないのではなく,どんなに目が良くてもウイルスは見えません。
ただ,ここで災害が起こって避難すべきとき,なにかの事情で医者に行ったほうが良いとき,いったん自分の怯えた理性に蓋をして,こういう視点で考えてみるのも良いかもしれません。