9月 9th, 2010
相続に関する法律は
『民法』に記載されています。
民法891条では
次に掲げる者は、相続人となることができない。
(1号から4号については後述)
5 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
と規定しています。
「遺言書を偽造したら、相続権はないぞ」
という規定です。
遺言書がある場合、相続は基本的に遺言書に沿って行われます。
遺言書に不満がある場合は
遺言書は偽造だとして遺言の無効を主張するか、
遺言を前提に遺留分を主張するかということになります。
そして、遺言無効の主張が通った場合、
偽造したのが相続人の一人であれば、
遺言書が無効になって法定相続分通りになるだけでなく、
遺言書を偽造した相続人の相続権はなくなります。
しかし遺言を偽造した相続人に子がいる場合、
その子が偽造した相続人にかわって
代襲相続できることになってしまいます。
(
「民法887条 子及びその代襲者等の相続権」をご参照ください。)
その場合、遺言を偽造した相続人の相続分が
他の相続人に配分されるわけではなく、
遺言を偽造した一家にも結局遺産がいくという結果になります。
なお、891条は
1号で、被相続人を殺した場合等
2号で、殺されたのに告訴しなかった場合等
3号で、騙したり脅したりして遺言書を書くのを邪魔した場合等
4号で、騙したり脅したりして遺言書を書かせた場合等
について、相続欠格を定めています。
相続問題については、当事務所のホームページの
こちらをご参照下さい。
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9月 8th, 2010
相続に関する法律は
『民法』に記載されています。
民法890条は
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。
この場合において、第887条又は前条の規定により
相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
と規定しています。
お亡くなりになった方の妻又は夫には
常に相続権があるということです。
「父さんがぼけているのをいいことに
女が勝手に籍を入れて、相続財産を狙っている!」
なんて場合は”婚姻の無効”という争いをしていって
「その女はそもそも配偶者ではない!」
という主張をすることになります。
内縁の妻や夫には相続権はありません。
婚姻関係(財産分与や慰謝料等)については
内縁関係についても、入籍している夫婦同様に保護されます。
しかし
”相続関係については、内縁は入籍夫婦とは違う”
というのが最高裁判所の基本的立場です。
ですから、籍をいれていない場合
残された(内縁の)配偶者は酷なことになりかねません。
高齢の内縁夫婦の場合、
籍を入れられない事情があるとしても、
せめて内妻に財産を遺贈する旨の遺言書を書いておきましょう。
相続問題については、当事務所のホームページの
こちらをご参照下さい。
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9月 7th, 2010
先日、司法研修所卒業10周年記念大会に参加してきました。
弁護士は、裁判官や検事と同じで
司法試験合格後、司法研修所で司法修習を経てから、弁護士になります。
司法研修所卒業から10周年、
同期が10年ぶりに一堂に会すというもので
法曹界では伝統的に行われているようです。
全国から、大会の会場である熱海に
何百人も弁護士や裁判官・検事が集まってきました。
10年ぶりに会ってみると
皆さん当時に比べて貫禄が出ていたように思います。
10年たつと、平均的にみて
顔が2割程度変化しているような気がしました。
(もちろん、心ではそう思いながらも
挨拶では「変わらないねえ」と言い合っていましたが・・・。)
私の頃の司法修習は
4月に入所し、6月頃まで埼玉県和光市の
司法研修所で座学をします。
その後1年間、実務修習ということで各地(私の場合は札幌でした)で
民事裁判、刑事裁判、検察、弁護士の研修をそれぞれ受けます。
裁判の修習では、裁判で裁判官の横に座ったり
検察の修習では取り調べをしたりします。
そして、7月に再び和光市に戻って座学をし、
10月に晴れて卒業となります。
私たちは”53期”です。
53期は800人程度います。
53期で、世間的又は業界的に有名な人として
土井香苗さん
荒井裕樹さん
戸田泉さん
といった方々がいます。
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9月 2nd, 2010
相続に関する法律は
『民法』に記載されています。
民法889条2項は
第887条第2項の規定は、前項第2号の場合について準用する。
としています。
民法887条2項とは、前回記載した
代襲相続(子が先に死んでいたら孫が相続するという規定)”
のことです。
「前号第2項」とは
兄弟姉妹が相続権をもつ場合についての規定です。
兄弟姉妹が先に亡くなっている場合は
その子(つまり、甥や姪)に相続権がうつりますが
兄弟姉妹の孫(つまり、甥や姪の子)にまでは相続権はありません。
他方で、亡くなった方の
子→孫→ひ孫については
延々、相続権があります。
また、亡くなった方の
親→祖父母→曾祖父母についても
延々、相続権があります。
このことは、
887条と
889条に書いてあるのですが
何度も条文を読んでも、なかなか読み取れないことと思います。
以下でこれらの条文についての解説をしたいと思います。
まず、
子→孫→ひ孫の系列については
887条3項で
”前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し
又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって
その代襲相続権を失った場合について準用する。”
とあります。
簡単に言うと
代襲相続の規定は
代襲者が相続開始より前に亡くなっていた場合にも使ってよい。
ということです。
亡くなった方の子供を
代襲した孫がすでに亡くなっていた場合にも
代襲の規定を使ってよいので
ひ孫に相続権がある(
再代襲)ということになります。
次に、
親→祖父母→曾祖父母の系列については
889条1条1項が「
直系尊属」と書いているので
この系列は全員対象になります。
直系尊属は全員相続権があると書いたうえで
889条1条1項但書で
但し、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
として、その中での順位を決めています。
子→孫の系列とは書き方が全然違います。
そして、
兄弟姉妹については
889条2項が
887条2項の代襲は準用しているけど
887条3項の再代襲は準用していないから、再代襲はない
だから
兄弟→甥・姪(代襲)はあるけど
甥・姪→甥の子・姪の子(再代襲)はない
というように読みます。
まるで暗号解読のような法律解釈ですね。
法律の内容を理解してもらいたいならば
もっとほかに書き方がありそうなものだと思ってしまいます。
相続問題については、当事務所のホームページの
こちらをご参照下さい。
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8月 31st, 2010
相続に関する法律は
『民法』に記載されています。
民法889条1項は
次に掲げる者は、第887条の規定により
相続人となるべき者がない場合には
次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
1.被相続人の直系尊属。
ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
2.被相続人の兄弟姉妹
としています。
亡くなった方に子供や孫がいない場合には親に、
親も既に亡くなっている場合は兄弟姉妹に
相続権があるということです。
親が相続するという事案はあまり多くありませんが
兄弟姉妹が相続する事案は多くあります。
通常、相続手続(銀行預金の引出等)には
戸籍謄本や除籍謄本、改製原戸籍が必要になります。
これによって、他に相続人がいないことを証明するのです。
亡くなった方に他に兄弟姉妹がいないことを証明するためには
亡くなった方の父親、母親それぞれについて
12、3歳の頃からのすべての戸籍をたどって
亡くなった方に本当に兄弟姉妹がいないかどうか
記載を確かめる必要があります。
亡くなった方が高齢の場合は
その父親や母親の戸籍となると
かなり古いものになります。
古い戸籍は、「戸主」や「家督相続」など
今ではあまりなじみのない言葉が記載してあったり
手書きで記載されていたりして
解読するのも困難なこともあります。
このように、
”戸籍集め”という事務作業も
かなり大変な場合もありますので
戸籍の取り寄せを弁護士等の専門家に依頼するのも
良いかもしれません。
当事務所では、
戸籍1通取得につきに手数料1,050円(+実費)で承ります。
相続問題については、当事務所のホームページの
こちらをご参照下さい。
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8月 30th, 2010
相続に関する法律は
『民法』に記載されています。
民法887条2項には、
”被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、
又は第891条の規定に該当し、
若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、
その者の子がこれを代襲して相続人となる。
ただし、被相続人の直系尊属でない者は、この限りでない。”
とあります。
つまり、亡くなった方に子供がいれば
子供には相続権がありますが(
887条1項)
子供がそれより前に亡くなっていたり、
”その子供の親に対する非行がひどいから”
などの理由で
子供が相続欠格や廃除に該当していたときは、
その孫に相続権があるということです。
「子供がそれより前に亡くなっていた場合」
については分かりやすいですが
「子供が相続欠格や廃除であった場合」
も、孫にその分の財産が行ってしまうということです。
これが妥当なのかどうかは意見が分かれると思いますが、
法律ではそうなっています。
このようなことを
「代襲」といいます。
”代わりに襲う”と書きますが
”襲う”というのはこの場合
”攻めかかって攻撃を加える”
という意味ではなく
”家系を受け継ぐ”
という意味です。
つまり
「代襲」とは
”代わりに相続する”という意味です。
なお
「相続放棄」の場合は
死亡や相続欠格とは違って
「代襲」になりません。
子供が
「相続放棄」したときは
孫にいかずに
第二順位の相続人である
親や兄弟が代わりに相続することになります。
相続問題については、当事務所のホームページの
こちらをご参照下さい。
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8月 26th, 2010
相続に関する法律は
『民法』に記載されています。
民法887条1項は
”被相続人の子は、相続人となる。”
と規定しています。
子供がいる場合は、必ず子供には相続権があるということです。
では、子供に財産をやりたくない場合はどうするか?
まず、遺言書を書くという手がありますが
子供には遺留分があります。
そうすると、子供が遺留分を請求してきた場合は
多少財産を渡さざるを得なくなります。
もし、財産を渡したくない理由が
”その子供の親に対する非行がひどいから”
という場合には
「
相続人の欠格事由(民法891条)」「
推定相続人の廃除(民法892条)」
という規定が使える可能性があります。
また
”事前に十分に財産をあげているからこれ以上やりたくない”
という場合は
「
特別受益者の相続分(民法903条)」という規定があります。
この規定は、基本的には、相続人間で遺産分割をする場合に利用する条文ですが
遺留分の計算の場合にも考慮されます。
そこで
”その子供に遺産をやらない”
という遺言を書いて
遺言書中にその理由として
”これこれの財産をやっているから”
ということも書いて、
できれば、
その財産をあげたことの証拠も遺言と一緒に保管しておく、
という段取りをふんで、遺留分の請求をふせぐというのも一つの手です。
相続問題については、当事務所のホームページの
こちらをご参照下さい。
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8月 24th, 2010
相続に関する法律は
『民法』に記載されています。
民法886条は次の通りです。
①胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
②前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。
お父さんが亡くなったときに
もしお母さんが妊娠していた場合、
お腹の中の子供にも相続権があるという規定です。
お父さんが多額の借金を背負っている場合、
赤ちゃんがその借金も相続することになりますので
注意が必要です。
相続放棄や
限定承認の手続をしっかりする必要があります。
一方、お父さんの財産を相続する場合は
赤ちゃんも含めて
遺産分割協議をするということになります。
この場合、赤ちゃんの「法定代理人」はお母さんです。
通常のことだったら、
赤ちゃんのことは法定代理人であるお母さんが代理で行うことが出来ますが
遺産分割協議になると
赤ちゃんとお母さんで遺産をどう分けるかという話になるので
赤ちゃんの権利をお母さんに委ねるのは問題になってしまいます。
そこで、家庭裁判所に特別代理人を選任してもらうことになります。
けっこう面倒ですね。
こんな時のために
お父さんが
”自分の全財産は妻に相続させる”
という内容の遺言書を作成ておけば、面倒は防げます。
若い夫婦であっても、
万が一の時、トラブルを最小限に抑えるためには
遺言書はとても大切な役割を果たすのです。
相続問題については、当事務所のホームページの
こちらをご参照下さい。
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8月 20th, 2010
本日の
朝日新聞の社説は
「成年後見10年 連帯の支え手を広げよう」
との内容でした。
専門家に
成年後見を依頼したとしても
費用を払う財産のない場合はどうするか?
やる気のある市民に
ボランティアでやってもらう体制を築いていこうとう
趣旨のようです。
ただ、無報酬でも、責任は責任。
万が一、ミスがあったときには
責任を負わなければなりません。
このあたりについて
保険を整備するなり、法整備をするなりしたほうが
よいのではないかという気がしないでもないです。
現状は
高齢者の判断力がなくなっていても
成年後見人を選任せず、身内が事実上管理しているということが多いようです。
しかしこのやりかたでは
法律上、(身内とはいえ)人の財産を勝手に管理しているように
見られてしまう恐れもあります。
(高齢者に判断力がないとすると、依頼を受けているということはできません)。
そういう意味で、しっかり成年後見の手続をして
財産管理の権限を明確にしておいてほうがよいと思います。
成年後見制度については、当事務所のホームページの
こちらをご参照下さい。
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8月 19th, 2010
相続に関する法律は
『民法』に記載されています。
民法885条1項本文に
”
相続財産に関する費用は、その財産の中から、これを支弁する”
とあります。
ここでの
「費用」とは
典型的なものでいうと
不動産の固定資産税です。
死亡前の
固定資産税債務は
「相続債務」という扱いになるので、この条文の対象外です。
また、遺産分割が終わって、その不動産を誰かが相続した場合
それ以後の
固定資産税は相続した人の負担になるので
これもこの条文の対象外となります。
ここでの
「費用」とは
被相続人が死亡してから遺産分割までの間
の
固定資産税等のことをいうのです。
相続の対象となる不動産に
相続人の一人が住んでいるような場合は
使用貸借が成立しているとして居住権が認められる反面、
固定資産税等の通常の必要費を
その不動産に住んでいる相続人が負担するのが
筋ということもあるでしょう。
この条文が問題になるのは
相続の対象となる不動産を、相続人が誰も利用していない場合、
つまり
”死亡後遺産分割までの空き家の固定資産税の負担”
というのが典型的かも知れません。
この条文にからんで
葬儀費用を誰が負担するのか?
と議論になることもよくあります。
喪主が負担するのか、相続人全員で負担するのかと言う問題です。
これは、未解決の問題で
裁判になった場合も、裁判官次第でどちらの結論もありうる部分です。
相続問題については、当事務所のホームページの
こちらをご参照下さい。
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