Archive for the ‘弁護士勝俣豪の法律解説(契約編)’ Category

契約書の題名2

金曜日, 10月 28th, 2011
前回,契約書の題名はあまり重要でないので,一応,「契約書」と
書いておけば概ねOkと書きました。

では,契約書の前に言葉を入れて,売買契約書とか,消費貸借契約書とか
賃貸借契約書と書く意味がないかというと,そうでもありません。

売買とか,消費貸借とか,賃貸借のような典型的な契約については民法に規定が
書いてあって,契約書に書いていないことは民法の規定に従うのが通常です。

そうすると,売買契約書と書いておけば,契約書にない部分でトラブルが起きても
民法の規定にそってトラブルが解決されることになります。
そして,一部変な規定もありますが,民法の規定に従えば,概ね常識的な解決になります。

そんなところで,この契約が「売買」であると,表題にしっかり書いておけば,
トラブルになりにくいという側面があります。
ただ,仮に契約書に売買契約書と書いてあっても,取引の実態からすれば請負契約とみるべき
という場合もあるので,売買契約書と書いておけば,常に民法の売買の契約が利用できる
という訳でもありません。

契約書の題名

金曜日, 9月 16th, 2011
約束事を書面にするとしても,通常は約束事以外のことも書きます。
書面の題名,日付,当事者の署名等です。

今日は契約書の題名について書きます。
契約書の題名は,日付や当事者の署名に比べると
重要性は低いです。
極端な話,なくても決定的ではないです。

でも,実際書面を作るとなると,一番はじめに書くので
「いったいなんと書けばよいのか」と真っ先に,気になって
聞きたくなる部分です。

通常は,契約書,○○契約書,合意書,念書,覚え書
なんて書きますが,どの表題を使ってもそれほど差はありません。

ですから,面倒な場合は契約書と書いておけばあまり間違いはありません。

意味があるとしたら,書面の全体的な信用性に影響が出ることがあるということです。

たとえば,何も題名がなく,契約内容だけが書いてある場合
「これは,正式な契約ではなく,草稿にすぎない。だから,題名がないんだ」
とかいう言い分がでかねません。
もちろん,そのような言い分が通るかどうかは,他の諸々の事情次第ですが,
いずれにしろ,せっかく書面にしたのに,ゴタゴタするのではがっかりです。

そういう意味では,題名は書いておいた方がよいことはよいです。

契約書の要否

水曜日, 9月 14th, 2011
「約束したけど,守るつもりはない」とは言わせないのが,
契約のルールだと言いました。

でも,実際に多いのはむしろ「そんな約束をした覚えはない」
という話です。

法律上は,約束は口約束でも契約書にしても,「約束は守らなければならない」
ということで一緒なのですが,「そんな約束はした覚えはない」
と言わせないための証拠として,契約書が大切になってきます。

証拠に使うという面では,紙切れにでも書いておけば,
弁護士に頼んで契約書を作ってもらう場合や,
公正証書で契約した場合と,本来は一緒です。

でも,実際の裁判の場だと,本人同士で作った
約束事等が書いてある書面は,なんだかんだ
理屈をつけて効力が否定されてしまうことも
少なくありません。

実際のところ,ただの個人同士でわざわざ
約束事を書面にすることはマレなのに
書面ができているということは
どちらかが一方的に強かったのではないかとか
何かごまかしがあったのではないか
動転していて真意ではないのではないか
とか,裁判官はみているようです。

でも,そもそも書面がなかったら,
「そんな約束をした覚えはない」
と言われてしまったら,難しくなることが多いです。
今の民事の裁判では,書面がないと立証したことには
ならない面があるからです。

つまり書面がないと立証が難しい。
書面があっても,素人書面だと効力が認められないこともある

というのが実情です。

無効になる契約

木曜日, 9月 8th, 2011
前回,「万引きをする」というような違法な約束は無効になると書きました。
違法というのは,万引きのように犯罪になる場合だけでなく,
民事の規定上,無効になる場合もあります。
たいていは,弱者保護という観点から決められています。

契約自由と言って,基本的にはどんな約束をしようが自由で
約束した以上は,国家権力が約束を守らせるという
ルールなのですが,強い立場の人が弱い立場の人に
一方的に不利な契約を押しつけて,
ひどい目に会う人が出てきてしまう場合があります。
そこで,あらかじめ,こういう約束は無効だよと決めておいてあります。

典型的なのは利息の上限です。
契約自由の建前からすれば,10日で2割というような
高額の利息の約束でも守らなければなりません。

そして,お金に困っている人は,思わず目の前のお金欲しさ
にそのような高額の利息の約束をしてしまいがちです。

そこで,利息制限法という法律で,利息の上限を決めて,
高額の利息の約束をしても無効ということにしています。
つまり,利息制限法を超える高利の約束をしても,
裁判所はそんな金利は認めませんということです。

なお,10日で2割というような法外な高利は,
そもそもまともな貸し付けでないとして,元金の返済義務
がなくなることもあります。
そのほかにも,借地借家法や消費者契約法で
弱者を保護するために,借家人や消費者側に不利な
一定の約束は無効になるようになっています。

無理な契約・違法な契約

火曜日, 9月 6th, 2011
「約束を守らない」とは言わせない,国が強制力を使って守らせる
というのが約束・契約に関する法律の仕組みと書きました。

ただ,もちろん例外があります。

「この石ころを金塊にしてみせる」と約束しても,
そんなことは無理な約束です。
ですから,そのような契約は不可能を目的とする契約として無効になります。
法的措置をとっても,石ころを金塊にする約束を守らせることはできません。

もっとも,それが詐欺話だった場合は,別途損害賠償等はできるでしょう。

また,「万引きしてきます」という違法目的の約束も無効です。
国家権力が違法な約束を強制的に守らせるというのは変な話です。
ですから,そのような約束に強制力はなく,
「約束したけど,守りません」と言っても,特に問題がないことになります。

仮に,「約束したのだから万引きしろ」とうるさく要求してきて困り果てて
弁護士に相談した場合,弁護士は
「そのような違法な約束は法的に無効であり, 守る義務はありません」
と回答することになります。

契約とは?

月曜日, 9月 5th, 2011
法律用語で,契約というのはとても大事な概念です。

でも,その意味するところは,約束と概ね同じです。
「契約を守れ」というのと「約束を守れ」というのは
だいたい,同じです。

よく弁護士の文書や何かで,法的措置云々と書きますが,
要は,裁判所の力を使って,無理矢理でも実行するぞ
ということです。

そんなわけで,約束・契約も,法的措置によって強制できる,
つまり,国家権力である裁判所の力で強制的に守らせることができます。

「確かに約束したけど,守るつもりはない」ということを許容しない
これを国が保証しているということです。

しばらく,そんな契約に関することを書いていこうと思います。