Archive for the ‘弁護士勝俣豪の雑感’ Category

入試改革2

木曜日, 5月 1st, 2014
以前,ペーパー試験の重視をやめる入試改革に反対するようなことを書きました。
でも,最近,少し思うところもあります。

子供のこともあり,おそらく4半世紀ぶりにサンデー毎日を買いました。
うーん。
受験にほとんど力を入れていない公立高校は
ほとんど,壊滅状況です。

私の頃は,無名高校から予備校もいかずに東大に入った人も
少しはいて「てめーらとは格が違う」というオーラを放とうとしていました。
この類は,もう絶滅してしまったのかもしれません。

弁護士の採用活動をしていても同様です。
以前の司法修習は,頭はよいが社会性のない人の集積所のような面もあり
寄り道感ただよう人はそれなりにいた気がします。
最近の履歴書で,寄り道感ただよう人はほとんどいないので,
これも絶滅危惧種なのでしょう。

ペーパーテストがある以上,より早い段階から準備することが成功確率を高めることは確かで,
多くの人間が,長期間の努力に耐えられずに挫折する中,それを乗り越えて来た人
が優秀で,社会的に有用な活動をする可能性は高いと思います。

でもちょっと多様性がなさすぎないか?
海外の大学を意識して入試改革を考えたとき,
何とかしたくなるのも分らんでもない気がします。

貸金業規制緩和検討

木曜日, 4月 24th, 2014
本日の朝日新聞の記事によると自民党は
借入金の限度を3分の1とする総量規制の緩和

上限金利を20%~29.2%に引き上げることを検討するとのことです。
ネット上で朝日の記事がみあたらないので、日経

総量規制や金利規制ができたときは、
当事務所も多重債務で困っている人がたくさん来ていました。

多重債務問題といっても、弁護士に依頼して債務整理すれば
ほとんどの場合、生活の再建は可能でした。
今の破産制度は、財産のない債務者には、あまりデメリットのない制度ですので
高利貸しと、破産制度というところである意味バランスがとれている印象もありました。
まれに、弁護士がついても、再建が困難な事案はサラ金の事案ではなく
保証人が問題となる、商工ローンか、逆に公的な金融機関がからむ事案でした。

逆に、サラ金というのは、どうにもお金に困ったときに
グタグタ言わずにお金を貸してくれるという面では
社会のセーフティネットの一環として機能しているのではないか?
サラ金がお金を貸してくれなくなると
盗みや強盗を働く人が増えたり、ヤミ金融がはびこるのではないか。

そんなわけで、総量規制や金利規制については、正直
「本当にそこまでしてしまって大丈夫かなあ」と思っていました。

以前に、派遣切りだなんだと言って騒いで、工場への派遣が禁止された折には
多重債務で苦しむ人の一時的な働きの場が奪われ、生活再建の選択肢がせばまったことを
実感しましたので、同様の逆効果が生まれるような気がしていました。

でも、総量規制や金利制限については、その後も犯罪が増えたという話も聞きませんし
ヤミ金が増えた様子もありません。

逆に、多重債務で相談する人は、以前に比べると大幅に減少し、
社会問題としての多重債務問題はおおむね解決しているように思えます。
(多重債務問題解決には、法曹界のアニマルスピリットも大いに貢献したようですが)

つまり総量規制と金利制限という政策は、成功しているように思えます。

そんなわけで、見直しの検討というのは、いまひとつ、ピンとこない話です。

 

stap

金曜日, 4月 11th, 2014
STAP細胞が世の中を騒がせています。

STAP細胞の真偽によって,今の騒動の位置づけも
大きく変わってくるのでしょう。
怪しげな騒動事件なのか,
世紀の発見に伴うエピソードなのか。

哲学というのは,ある意味科学・学問になる前段階の
諸々の知的な営み,という面があります。
ある人の考えを,検証・反証し共有できる状況になって
科学なり学問なりになります。
たとえば,カントの認識論は,そういう検証ができないままですので
カントに対する尊敬に基づいて,その思想を研究することはできても
認識論という学問にはなっていません。だから哲学です。
STAPの有無ということは,哲学・思想ということではなく,
他の人も再現できて検証できるか,ということで真偽を明らかにできるはずです。

そういう点では,小保方氏の会見は,STAPの真偽において何ら意味はないはず。
ですが,諸々で,小保方氏に同情的な意見も多く耳にします
その多くは,STAPも真実なのではないかとの印象をほのめかしています。
これは,弁護士の立場からすると興味深い。
やはり,どのような見た目・属性の人が,どのように発言するかによって
本来,無関係なところについて,心証が形成されるというのが人間のクセなのでしょう。
仮に,落合博満氏のような人が,お前らに言ってもどうせわからないだろうけど
という態度で,概念的にはほぼ同内容のことを伝えたとしても
STAPは真実なのではないか,と思わせることはできなかったように思います。

まあ,科学的に立証できなくても,これだけ多くの人が信じている状況であれば
商業的には価値がありそうです。
リケンのSTAPスープとか,健康補助食品として生き残るのかも知れません。

 

民主主義不適格

木曜日, 4月 10th, 2014
委任不適格とでもいうことがあります。

弁護士と依頼者との間の契約は委任契約と言います。
モノの売り買いのように一回きりではなく継続しますし,
依頼した弁護士の裁量に,ある程度まかせることになりますので
弁護士と依頼者との信頼関係がないと成り立ちません。

マレですが,相談者の中に,弁護士というもの(場合によっては人間全般)
について不信感が強くて,とてもじゃないが,
信頼して任せるなんてできないという方がいます。
そういう場合は,委任契約を締結することはできないので
交渉であれば,裁判であれば自分ですることをお勧めすることになります。
これを委任不適格と呼びます(私が呼んでいるだけで学問用語ではないです)。

さて,最近の安部政権の動きについて,
弁護士会に属しているせいか,朝日新聞を読んでいるせいか
何かよからぬことを企んでいて,日本がとんでもないことになる
とでもいう論調にたびたびふれます。
安部政権がなにをしようが,いずれは選挙があるわけだし,
将来,仮に戦争だなんだという場合も民主主義の枠組みの中できまるはずです。
そして,批判の対象になっている集団的自衛権だなんだということは
他の民主主義の先進国では当たり前のことで,別に邪悪な国家のマネゴト
をしようとしてるわけではありません。
結局のところ,批判の根っこにあるのは,他の欧米諸国と違い
日本の民主主義は機能しないに違いない
という民主主義に対する不信なのだろうと思います。

民衆の多数決に信頼して任せるなんて,とんでもない。
ろくでもなく,おそろしいことになる。
別にこれは,珍しい考えではなく,
そういう考えに基づいて一党独裁を行っている国も多くあります。

まあ,世の中全体のことを真剣に考えて思い詰めれば詰めるほど
おかしな考えにとりつかれて,先鋭化するというのが人間の悲しいサガですので,
なんともいいようもありませんが。

 
 

考え

火曜日, 12月 17th, 2013
特定秘密保護法に関連して
戦前のようになってしまうかのような話が出ていました。
同法の評価はさておき,
いわゆる望ましくない社会を生み出す考えは思わぬところにひそんでいます。

まず,代表的な考えは
資本主義を憎んで,社会的弱者の善良性を訴える考えです。
この考えに取り憑かれると,正義感にうちふるえて
多くの人が残虐行為に走ります。
ナチスドイツやポルポトが典型です。
こういったものは,一見わかりやすい邪悪な考えにとりつかれたのではなく
いかにも善良そうな正義感に訴えかけたからこそ,起こりえたのたど思います。

また,啓蒙的な考えもなかなかです。
啓蒙が好きな人は,思想の自由を認めるそぶりをしますが,
実際は認めません。
自分と違う考えの人が,正しい考えにいたるまで議論を続けます。
権力を握るといわゆる教育施設を作り上げます。
正しい考えが身につくまで,施設から出ることはできません。

こういう考えの人と特定秘密保護法に強く反対している人というのは
私には重なって見えなくもないので,なんとなく皮肉な感じがします。

 
 

脱原発

水曜日, 11月 13th, 2013
最近,小泉元首相の脱原発発言が
話題になっています。

政治的影響力の強さは,おいておくとしても
この意見には,ある種の驚きとともに
重みを感じています。

私は,原発の問題はおおっぴらには
言えないものの国防の問題と密接に結びついている
と思っていました。

ひとつには,以前,確か中曽根元首相のインタビュー記事で読んだ記憶がありますが
太平洋戦争に突き進んだ一因として,石油の供給を止められる恐怖があり
二度とそういった要因で戦争を起こさないために,エネルギーの多元化をするめる
という発想。

もうひとつは,いつでも核武装できる体制を整えることで
核抑止力を発揮したり,アメリカの核政策の一翼を
担ったりする

こういう問題があるのだと,漠然と考えていて
そう言った問題について,しっかり考えるだけの情報がなければ
原発を維持するかどうかという問題に対し
よりよい意見は持てないと思っていました。

ですから,こういった問題意識が欠落した人が
脱原発と言っても,今ひとつ説得力を感じていませんでした。

でも,小泉元首相となると違います。
当然,こういった問題も考慮した上での意見と推察されます。

はたして,今後,どういった広がりがあるのか興味深いです。

入試改革

金曜日, 11月 8th, 2013
センター試験を廃止して、人物本位の大学入試にする
なんてことが報道されています。

私は,センター試験第1期生なので感慨深いです。

世の中には、自分は人間としては優れているのだが
一発試験に弱かったために、社会から不当な扱いを受けている
と思い込んでいる人間がいて
自分のような人間として優れている人間が
正当に評価される社会を作るべきと考えて
色々と画策するようです。

そのような新制度に基づいて,いわゆる一流大学に入っても
企業なり社会なりは,その人を従来の一流大学卒のようには
扱えるわけがありません。
そして,一流大学卒の扱いを期待して,入学した人は期待はずれとなる

そういえば司法試験改革も、似たような方向性でした。
まあ,司法改革と同じような効果が期待されるところです。

 

美談とオカルト

月曜日, 10月 28th, 2013
ある優しい小金持ちが,貧乏な人を見つけて
衣食住に不自由のないように面倒を見てやりました。
ここまでは美談です。
でも,その貧乏な人は,その後体調不良等を訴え
その医者代等がかさみ,優しい小金持ちは子孫代々でも返しきれない
莫大な借金を残すことになってしまった。
こうなると,何かに取り憑かれれた家とでもいうオカルト話です。

日本という国が行っている弱者救済だ,社会保障だという話は
既にオカルトの領域に入っているのだろうと思います。
ここで,憑いたものは貧乏な人ではありません。
自分だって何時大変なことになるか分からないし,その際は
小金持ちの子々孫々のことなど考えずに,助けてくれというと思います。
これは,ごく普通のことです。
貧乏な人の代わりに,小金持ちに金をせびる人が
まさにソレなのではないかという気がします。

アメリカという国は立派だと思います。
多少の政府機能が停止しても,国がとりつかれないように頑張っています。

現在の収入の範囲を超えて,つまり財政赤字で将来の人達を犠牲にしてまで
現在の弱者を救済するというのは,どう考えてもおかしな行為です。
所得の再分配とは次元が異なる話です。
日本にも,そういう社会的な意識が生まれるにはどうすればよいのでしょうか。

自分の属している団体が,社会正義の名のものとに,せびり行為を繰り返すのも止められない身ですので,まあ,なんとも恥ずかしいところではありますが。

司法試験合格者は現状維持

水曜日, 9月 11th, 2013
司法試験の合格者は今年も2000人程度でした。

風向きが変わったので,大幅に減ったりして,
等と思っていましたが,一安心です。

というのも,仮に合格者1000人だったら,
当事務所の今後の計画に大きな狂いが出かねないからです。
徐々に弁護士を採用して拡大していく予定ですが,
おそらく合格者が1000人だと,司法修習生の採用の力関係は
完全に逆転し,募集してもなかなか,採用できない状況になるでしょう。

そうなると,妥協して採用するか,無理に採用はしないということになって,
おそらく後者を選ぶことになって,拡大はしなくなる。

そんな危惧もありましたが,どうやらそこまでの心配はなさそうです。

こういう観点からすると,ある程度法曹人口を増やすというのは,
エンドユーザーと,弁護士の卵を仲介する立場にある法律事務所としては,
選択肢が多くなる分,有り難いのかも知れません。

ただ,いずれにしろ,問題は,今年も2000人ということは
志望者が減って,志望者の質も下がっていることからすると
明らかに合格水準を下げているということです。

いったい何のための資格制度なのか,よくわかりません。

業界内では,色々,すごい状況の新人弁護士の話がでてきます。
裁判所内でも,色々話題になっていることが,こちらにも漏れてきます。

で,裁判所がそういうことを言っていることについては,
人ごとのように言うな,
そういうのにバッチを与えているのは司法研修所だろうと
思います。

たまに思うのですが,法律事務所が新人弁護士を採用し,
仕事をまかせたところ,その弁護士が弁護士として当然知っていて
しかるべき知識を欠いていたためにミスを犯し,依頼者に迷惑を掛けた。
法律事務所は,依頼者に賠償をした。
このとき,こういう人にバッチを与えた司法研修所(国?)なり,
司法試験で合格させた法務省なり
こういう人を卒業させたロースクールなりに,この損害を求償できないか,ということです。

一定程度の知識があることの証として,資格がある。
その資格を信用して仕事を依頼したが,その信頼を裏切られた。
そのような無責任な資格付与をした責任追及と言うことです。

で,理屈は立ちますが,まあ司法界の中枢に喧嘩を売るわけですから
裁判で勝てる訳はないです。

ですが,地方裁判所の裁判官なりが,この理屈を認めて
司法研修所に対する求償を認めれば
裁判所がネタにしているような,どうにもならない人が
つまり,どうみても弁護士資格に値する能力がないと
裁判官が判断する人が,
弁護士になって卒業してくることに対する抑止効果は十分あると思います。
ということで,裁判官達はそういう権原を持っているのですから
人ごとのように言うな,ということです。

もちろん,弁護士という資格に期待して良い
最低限度の知識が何かという問題はあります。

でも,以前は,暗黙のうちになんとなく了解されていた水準があったと思います。
それが,崩壊して,採用する法律事務所側も,
弁護士資格というものの意味を理解できなくなった。
ということが問題なのだろうと思います。
その水準が下がったとはいえ,この程度のことは
分かっているらしいということが,つかみきれません。

で,おそらくその水準が毎年下がり続けているわけですから,
さらにその把握が困難になっています。

正直,日弁連なりなんなりで,別途,司法修習生に
法律知識を試す試験を実施してくれれば,多少は採用の参考になるのに
と思ったりします。

弁護士でさえ,現在の弁護士資格が何の能力を担保しているのか
理解できなくなっているということが,人数云々よりも
困った問題です。

 
 

弁護士事務所の人時生産性その2

水曜日, 9月 4th, 2013
前回,弁護士事務所の人時生産性のことを書きました。

そして,法テラスの料金だと通常の飲食店のアルバイト並になりかねない
ことを書きました。

ということは,法テラスを積極的に受任している事務所で働いている弁護士は
飲食店のアルバイト並の給料しかもらえていなくても,それは当然ということです。

事務所がぼった食っているとか,搾取されているとか思うのは,勘違いです。

いくら頑張って仕事をしても,そこから生まれている時間あたりの売上は
飲食店のアルバイト程度です。ですから,その仕事をしたことに対する
時間あたりの給料も飲食店のアルバイト並ということです。

それをどう思うかは,人それぞれの考え方だと思います。

ただ,当事務所は上記のような状況は,当事務所に依頼する方にとって
良い状況ではないと考えているので,法テラスの利用はお断りしています。