Archive for the ‘弁護士勝俣豪の法律解説(相続編)’ Category

民法889条 直系尊属及び兄弟姉妹の相続権2

木曜日, 9月 2nd, 2010
相続に関する法律は『民法』に記載されています。


民法889条2項

第887条第2項の規定は、前項第2号の場合について準用する。
としています。


民法887条2項とは、前回記載した

代襲相続(子が先に死んでいたら孫が相続するという規定)”

のことです。

「前号第2項」とは

兄弟姉妹が相続権をもつ場合についての規定です。

兄弟姉妹が先に亡くなっている場合は

その子(つまり、甥や姪)に相続権がうつりますが

兄弟姉妹の孫(つまり、甥や姪の子)にまでは相続権はありません。

他方で、亡くなった方の子→孫→ひ孫については

延々、相続権があります。

また、亡くなった方の親→祖父母→曾祖父母についても

延々、相続権があります。


このことは、887条889条に書いてあるのですが

何度も条文を読んでも、なかなか読み取れないことと思います。


以下でこれらの条文についての解説をしたいと思います。

まず、子→孫→ひ孫の系列については

887条3項

”前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し

又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって

その代襲相続権を失った場合について準用する。”

とあります。


簡単に言うと

代襲相続の規定は

代襲者が相続開始より前に亡くなっていた場合にも使ってよい。

ということです。


亡くなった方の子供を代襲した孫がすでに亡くなっていた場合にも

代襲の規定を使ってよいので

ひ孫に相続権がある(再代襲)ということになります。


次に、親→祖父母→曾祖父母の系列については

889条1条1項が「直系尊属」と書いているので

この系列は全員対象になります。

直系尊属は全員相続権があると書いたうえで

889条1条1項但書

但し、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
として、その中での順位を決めています。


子→孫の系列とは書き方が全然違います。

そして、兄弟姉妹については

889条2項

887条2項の代襲は準用しているけど

887条3項の再代襲は準用していないから、再代襲はない

だから

兄弟→甥・姪(代襲)はあるけど

甥・姪→甥の子・姪の子(再代襲)はない

というように読みます。

まるで暗号解読のような法律解釈ですね。


法律の内容を理解してもらいたいならば

もっとほかに書き方がありそうなものだと思ってしまいます。


相続問題については、当事務所のホームページの

こちらをご参照下さい。

民法889条 直系尊属及び兄弟姉妹の相続権1

火曜日, 8月 31st, 2010
相続に関する法律は『民法』に記載されています。


民法889条1項

次に掲げる者は、第887条の規定により
相続人となるべき者がない場合には
次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。

1.被相続人の直系尊属。
ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。

2.被相続人の兄弟姉妹
としています。


亡くなった方に子供や孫がいない場合には親に、

親も既に亡くなっている場合は兄弟姉妹に

相続権があるということです。


親が相続するという事案はあまり多くありませんが

兄弟姉妹が相続する事案は多くあります。


通常、相続手続(銀行預金の引出等)には

戸籍謄本や除籍謄本、改製原戸籍が必要になります。

これによって、他に相続人がいないことを証明するのです。


亡くなった方に他に兄弟姉妹がいないことを証明するためには

亡くなった方の父親、母親それぞれについて

12、3歳の頃からのすべての戸籍をたどって

亡くなった方に本当に兄弟姉妹がいないかどうか

記載を確かめる必要があります。


亡くなった方が高齢の場合は

その父親や母親の戸籍となると

かなり古いものになります。


古い戸籍は、「戸主」や「家督相続」など

今ではあまりなじみのない言葉が記載してあったり

手書きで記載されていたりして

解読するのも困難なこともあります。


このように、”戸籍集め”という事務作業も

かなり大変な場合もありますので

戸籍の取り寄せを弁護士等の専門家に依頼するのも

良いかもしれません。


当事務所では、

戸籍1通取得につきに手数料1,050円(+実費)で承ります。

相続問題については、当事務所のホームページの

こちらをご参照下さい。

民法887条 子及びその代襲者等の相続権

月曜日, 8月 30th, 2010
相続に関する法律は『民法』に記載されています。


民法887条2項には、

”被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、
又は第891条の規定に該当し、

若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、

その者の子がこれを代襲して相続人となる。
ただし、被相続人の直系尊属でない者は、この限りでない。”
とあります。


つまり、亡くなった方に子供がいれば

子供には相続権がありますが(887条1項

子供がそれより前に亡くなっていたり、

”その子供の親に対する非行がひどいから”
などの理由で

子供が相続欠格や廃除に該当していたときは、

その孫に相続権があるということです。


「子供がそれより前に亡くなっていた場合」
については分かりやすいですが

「子供が相続欠格や廃除であった場合」
も、孫にその分の財産が行ってしまうということです。

これが妥当なのかどうかは意見が分かれると思いますが、

法律ではそうなっています。


このようなことを「代襲」といいます。

”代わりに襲う”と書きますが

”襲う”というのはこの場合

”攻めかかって攻撃を加える”

という意味ではなく

”家系を受け継ぐ”

という意味です。

つまり「代襲」とは

”代わりに相続する”という意味です。


なお「相続放棄」の場合は

死亡や相続欠格とは違って「代襲」になりません。

子供が「相続放棄」したときは

孫にいかずに

第二順位の相続人である

親や兄弟が代わりに相続することになります。


相続問題については、当事務所のホームページの

こちらをご参照下さい。

民法887条 第一順位の相続人・代襲相続人

木曜日, 8月 26th, 2010
相続に関する法律は『民法』に記載されています。

民法887条1項

”被相続人の子は、相続人となる。”
と規定しています。

子供がいる場合は、必ず子供には相続権があるということです。


では、子供に財産をやりたくない場合はどうするか?

まず、遺言書を書くという手がありますが

子供には遺留分があります。

そうすると、子供が遺留分を請求してきた場合は

多少財産を渡さざるを得なくなります。


もし、財産を渡したくない理由が

”その子供の親に対する非行がひどいから”
という場合には

相続人の欠格事由民法891条」「推定相続人の廃除民法892条

という規定が使える可能性があります。


また

”事前に十分に財産をあげているからこれ以上やりたくない”
という場合は

特別受益者の相続分(民法903条)」という規定があります。

この規定は、基本的には、相続人間で遺産分割をする場合に利用する条文ですが

遺留分の計算の場合にも考慮されます。


そこで

”その子供に遺産をやらない”
という遺言を書いて

遺言書中にその理由として

”これこれの財産をやっているから”
ということも書いて、

できれば、その財産をあげたことの証拠も遺言と一緒に保管しておく、

という段取りをふんで、遺留分の請求をふせぐというのも一つの手です。


相続問題については、当事務所のホームページの

こちらをご参照下さい。

民法886条 相続に関する胎児の権利能力

火曜日, 8月 24th, 2010
相続に関する法律は民法に記載されています。


民法886条は次の通りです。

①胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。

②前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。


お父さんが亡くなったときに

もしお母さんが妊娠していた場合、

お腹の中の子供にも相続権があるという規定です。


お父さんが多額の借金を背負っている場合、

赤ちゃんがその借金も相続することになりますので

注意が必要です。

相続放棄限定承認の手続をしっかりする必要があります。


一方、お父さんの財産を相続する場合は

赤ちゃんも含めて遺産分割協議をするということになります。

この場合、赤ちゃんの「法定代理人」はお母さんです。

通常のことだったら、

赤ちゃんのことは法定代理人であるお母さんが代理で行うことが出来ますが

遺産分割協議になると

赤ちゃんとお母さんで遺産をどう分けるかという話になるので

赤ちゃんの権利をお母さんに委ねるのは問題になってしまいます。

そこで、家庭裁判所に特別代理人を選任してもらうことになります。

けっこう面倒ですね。


こんな時のために

お父さんが

”自分の全財産は妻に相続させる”
という内容の遺言書を作成ておけば、面倒は防げます。


若い夫婦であっても、

万が一の時、トラブルを最小限に抑えるためには

遺言書はとても大切な役割を果たすのです。


相続問題については、当事務所のホームページの

こちらをご参照下さい。

民法885条 相続財産に関する費用

木曜日, 8月 19th, 2010
相続に関する法律は民法に記載されています。


民法885条1項本文に

相続財産に関する費用は、その財産の中から、これを支弁する

とあります。


ここでの「費用」とは

典型的なものでいうと不動産の固定資産税です。


死亡前の固定資産税債務は

「相続債務」という扱いになるので、この条文の対象外です。


また、遺産分割が終わって、その不動産を誰かが相続した場合

それ以後の固定資産税は相続した人の負担になるので

これもこの条文の対象外となります。


ここでの「費用」とは

被相続人が死亡してから遺産分割までの間

固定資産税等のことをいうのです。


相続の対象となる不動産に

相続人の一人が住んでいるような場合は

使用貸借が成立しているとして居住権が認められる反面、

固定資産税等の通常の必要費を

その不動産に住んでいる相続人が負担するのが

筋ということもあるでしょう。


この条文が問題になるのは

相続の対象となる不動産を、相続人が誰も利用していない場合、

つまり

”死亡後遺産分割までの空き家の固定資産税の負担”
というのが典型的かも知れません。


この条文にからんで

葬儀費用を誰が負担するのか?

と議論になることもよくあります。

喪主が負担するのか、相続人全員で負担するのかと言う問題です。

これは、未解決の問題で

裁判になった場合も、裁判官次第でどちらの結論もありうる部分です。



相続問題については、当事務所のホームページの

こちらをご参照下さい。

民法882条 相続開始の原因

水曜日, 8月 18th, 2010
相続に関する法律は民法に記載されています。


相続についての法律の一番はじめは

882条 相続は、死亡によって開始する

という条文です。


当たり前と言えば当たり前ですが

民法には、こういう当たり前のことが実にたくさん書いてあります。


法律相談をしていると

「兄貴夫婦が親父に取り入って
人のいい親父は、兄貴夫婦の言いなりどんどん財産を使ってしまっている。
これでは、自分に対する相続財産が減ってしまうので
何とかできないか?」
というような相談は意外に多いです。


相続は、死亡によって開始する”と法律にありますので

相続権が発生するのは、あくまで死亡後のこと。

存命中に相続権を保護するために何かすることはできません。

お父さんが自分の財産をどう処分しようと勝手”というのが原則です。


このような事例では、相続開始後に

「特別受益」「遺留分侵害」の問題として考えていくことになります。


また、お父さんの判断能力が既に著しく減退しているような場合であれば

「法定後見制度(成年後見、保佐、補助)」を利用して

お父さんの財産を守ること

(あくまで、お父さんの財産を守るのであって

相続権を守るためのものではありません)

ができます。


相続問題については、当事務所のホームページの

こちらをご参照下さい。

法定後見制度については、当事務所のホームページの

こちらをご参照下さい。