Archive for the ‘弁護士勝俣豪の法律解説(相続編)’ Category

共有物分割

水曜日, 10月 24th, 2012
裁判所に行くと、最近は共有物分割の裁判が増えている気がします。

共有物分割とは何か?
というと、共有になっている不動産
(本当は不動産に限らないけど、普通は不動産)
の共有関係を清算する手続きです。

1つ(1筆)の土地の3分の2をAさん、3分の1をBさん
が所有しているというようなのが共有です。
登記簿にも、そのように書いてあります。

3分の2といったら、西側から3分の2なのか
北側からか、それとも持分が多い方から先に
取り分をとれるのか?
というとそういうものでなく、土地全体について
3分の2の権利があるという、想像上の世界です。

そんな中途半端な状況は不便なので、
できれば、Aさんのものか、Bさんのものか
一人の所有にしたいものです。

その手続きが、共有物分割です。

本当は裁判をしないで、AさんとBさんが
話し合いで、「俺がお前の分を買い取るよ」
と言えば、すむのですが、そうもいかない場合、
裁判での共有物分割になります。

裁判になった場合、どちらかが
「相当額で相手の持分を買い取るぞ」
と言って、お金のあることを示さなければ
不動産を競売にかけて、競売で入ったお金を
持分に応じて、分配して、手続き終わりです。

でも、なぜ、共有なんていう状況が生じるのでしょうか?
実は、相続による場合が多いです。
相続が発生すると、相続人間の共有になります。
相続人の間の共有を清算するのを、遺産分割と言います。

でも、遺産分割で話し合いがつかずに、
家庭裁判所が審判で遺産分割して共有にしたら、
その後の共有の清算は
遺産分割でなくて、共有物分割の裁判になります。

地方裁判所で、共有物分割が増えているということは、
まとまらない相続事件が増えているのかもしれません。

民法900条 法定相続分③(兄弟姉妹と配偶者)

火曜日, 11月 9th, 2010
相続に関する法律は『民法』に記載されています。

民法900条

同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
1 (省略 以前のブログ)

2 (省略 以前のブログ)
3 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは
配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は、4分の1とする。
4(省略)
と規定しています。


具体的には、

亡くなった方に奥さんはいたが

子や孫はおらず、両親も既に亡くなっているという場合です。


ある程度高齢になると

兄弟とも疎遠になっていたり、

兄弟は既に亡くなっていて

甥姪の代になっていることも多いので

このような場合に遺産分割協議をするのは大変なこともあります。


ある人の兄弟姉妹が誰であるかを公的に証明するためには

亡くなった方の両親それぞれについて

12,3歳頃からの除籍や改正原戸籍をすべて取り寄せる必要があるので

この作業だけでもかなりの分量になることがあります。

昔の戸籍だと手書きで書いてあり

判読などがとても難しいこともあって

まるでパズルを解くような感覚で

戸籍の読み取りをしなければなりません。


自分の死後、

全ての財産を妻に渡したい場合には

遺言でその旨の遺言書を作っておくのがよいでしょう。

兄弟姉妹には遺留分がないので

このような遺言書をつくっておけば

確実に妻に財産を渡すことが出来ます。


もっとも、妻が亡くなったあとは

その財産は妻の親か兄弟姉妹の手に渡ることになります。

そうすると、夫の身内には一切財産が渡らず

妻の身内にいってしまうことになります。


もし、この点に違和感があるようでしたら

そのようなことも考慮して

自分の兄弟姉妹に

多少の財産がいくような遺言書を作ってもよいかも知れません。


遺言書作成については、当事務所のホームページの

こちらをご参照下さい。

民法900条 法定相続分②(親と配偶者)

火曜日, 11月 2nd, 2010
相続に関する法律は『民法』に記載されています。

民法900条

同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。

1 子及び配偶者が相続人であるときは

子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。

2 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは
配偶者の相続分は、3分の2とし、直系尊属の相続分は、3分の1とする。
(3 以降は省略します)

子供のいる家族であれば

配偶者の相続分が2分の1で、子供の相続分も2分の1

一方子供のいない夫婦の相続の割合は

配偶者が3分の2で、親が3分の1

親の相続分が子供のいる場合よりも少なくなっています。

核家族のイメージからすると、当然とも思えます。


”子供のいない夫婦”といえば

結婚したての若夫婦が思い浮かぶかと思います。


そういった場合、もし夫に財産があるとしたら

親や祖父母から受け継いだものである可能性が高いといえます。

この若夫婦が離婚したとなると

親かから受け継いだ財産は財産分与の対象とならず

妻は権利主張できません。


ところが、夫が死亡した場合は、

親や祖父母から受け継いだ財産も含めて、

全財産の3分の2を妻が相続する権利があります。

妻が今後子供を育てて行かなければならないのであれば

それもよしですが、この場合子供はいません。


夫亡きあと、夫の実家とは段々と縁が切れていく可能性が高い中で

”全財産の3分2を相続する”というのは多少違和感があります。


親や祖父母から受け継いだ財産を新婚の妻に渡すまいと、

新婚早々、夫が

「全財産を親にやる」

というような遺言は書きにくいでしょうから

遺言による対処も心情的には難しいですね。


”子供のいない夫婦”のもう一つのケースは

子供がいない熟年夫婦で、親がまだ元気な場合です。


こういったケースは先ほどとは逆で

3分の1とはいえ、親が権利主張できるのも変な気がします。

夫婦の財産の大半は、夫婦で作り上げたものでしょうから・・・。


ただ、このような場合は

たとえば夫が亡くなり、さらに妻も亡くなると

夫婦の全財産は、妻の親か兄弟が相続することになります。


夫の実家には相続の権利はありません。

その点を考えると

夫が亡くなった時点で

夫の実家に財産の3分の1が行くというのも

妥当なのかも知れません。


相続問題については、当事務所のホームページの

こちらをご参照下さい。

民法900条 法定相続分①(子と配偶者)

火曜日, 10月 26th, 2010
相続に関する法律は『民法』に記載されています。


民法900条

同順位の相続人が数人あるときは
その相続分は、次の各号の定めるところによる。
1 子及び配偶者が相続人であるときは
子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。
(2 以降は、次回以降に説明します)

と規定しています。


亡くなった方の、夫または妻(配偶者)と、子供が相続人の場合

という一番典型的な場合です。

ちなみに、相続人が配偶者の場合も、民法901条はにより、同じことになります。


それぞれの相続分は以下のとおりです。

1人と配偶者の場合は、2分の1ずつ

2人と配偶者の場合は、配偶者が2分の1、は4分の1ずつ

3人と配偶者の場合は、配偶者が3分の1、は6分の1ずつ

2人、0人、配偶者の場合は、配偶者が2分の1、は4分の1ずつです。


形式的にみると当然にみえますが、現実には違和感を覚える場合もあります。

たとえば、夫名義の土地建物に夫婦で住み

老後の資金もすべて夫名義の預金に入れている。

子供の世帯とは、別に生活しており、家計も当然独立している。

よくある場合です。


こういう状況であれば、夫が亡くなっても

そのまま全財産は妻が引継ぎ

妻も亡くなってから、子供達で財産分け

という流れのほうが自然な気がします。


夫としても妻としても

自宅や老後資金は、2人の生活のためのものであって

どちらかが先に亡くなった場合に

資金の半分を子供に渡すなどということは

あまり考えていないことのほうが多いでしょう。


子供が

「法定相続分はともかく
母さんだって今後の生活があるんだから、
亡くなった父さんの遺産は、母さんにすべて譲るよ。」
というのであれば問題はありませんが

子供も結婚して家庭があったりすると

そうすんなりとはいかないケースも出てくる可能性もあります。


そんなわけで

「法定相続分にしたがっていれば、まあうまくいくだろう。」
とは限りません。

この場合は

”妻に全財産を相続させる”旨の

遺言書を作っておくのがよいと思います。

相続問題については、当事務所のホームページの

こちらをご参照下さい。

民法899条 共同相続人の遺産承継

木曜日, 10月 21st, 2010
相続に関する法律は『民法』に記載されています。


民法899条

各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
と規定しています。


”相続分”とは、相続人が妻と子2人の場合

妻が2分の1、子はそれぞれ4分の1ずつ、

などという、相続権の割合のことです。


遺産が不動産の場合、前回記載したとおりに共有になりますが

その共有の割合が相続分によりますというのがこの規定です。

ところが銀行預金については

お金をを請求できる権利(法律用語では”金銭債権”)なので、

民法427条という条文があり、何もせずに分割されてしまいます。

つまり、前回記載したように”共有物分割””遺産分割”をせずに

相続発生とともに、相続分どおりに分割されます。


具体的には、1,000万円の預金があって

2分の1の相続分を有する妻は

遺産分割をしなくても

500万円の預金が自分のものになり引出手続ができることになります。

じゃあ銀行に行って

「亡くなった夫の預金500万円をおろします!」
と言ったら銀行が応じてくれるのか?

それはできません。

「他の相続人の実印を当行所定の用紙に押していただき、
印鑑証明を用意してください」
と言われてしまいます。


一体どういうことでしょうか?


法律上は、銀行は妻の要求に応じるべきなのです。

しかし銀行としては

遺言書があるかも分からないし、

別の割合で遺産分割協議が成立しているかも知れないし・・・

ということで

トラブルに巻き込まれたくないがために

「他の相続人の印を・・・」
というのです。


ですから、トラブルが予想されないことを説明すれば

引き出しに応じてくれる可能性もあります。


銀行が引き出しに応じない場合、

銀行に対して預金を下ろせという裁判を起こす方法もあります。

「銀行はお金を払いなさい」
という勝訴判決がもらえ

その判決をもらえば、銀行は払ってきます。

銀行としては、判決が出たらから払わざるを得なかったという形がとれれば

トラブルに巻き込まれにくくなるからです。


実際は、銀行の都合だけでなく相続人としても

銀行預金は遺産分割の話し合いに加えた方が望ましいことが多いです。

というのは不動産は処分して換価しにくいことが多いので

細かく分けることができる預貯金が

遺産分割を皆さんの納得いく形にする調整役になるからです。


でも、たとえば相続人の一人が行方不明だったり

認知症で判断力を喪失している場合、

相続人が妻と子で子が未成年の場合は

遺産分割をするために

不在者財産管理人や、成年後見人特別代理人
の選任を裁判所に求める必要があります。


このように遺産分割をするために

色々面倒だったり余分な費用がかかる事案の場合で

相続財産が銀行預金だけの場合であれば

敢えて遺産分割をせずに、銀行に直接請求をしたほうが早道の場合もあります。


相続問題については、当事務所のホームページの

こちらをご参照下さい。

民法897条 祭祀に関する権利の承継

月曜日, 10月 18th, 2010
相続に関する法律は『民法』に記載されています。


民法897条は、

系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず
慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。
ただし、被相続人の指定に従って
祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは
その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは
同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
と定めています。


お墓や仏壇については

他の財産の相続のルールとは異なったルールに従うということです。


お墓や仏壇は、

まずは”被相続人の指定”
それがなければ”慣習”
それが明らかでなければ”家庭裁判所”
が決めるというルールです。


遺産分割のように、話し合いで決めるワケではありません。

もちろん、被相続人の明確な意思もなく

慣習と言われても・・・ということも多いので

事実上、話し合いで決めていることも多いです。


お墓を引き継ぐことになった場合

「お墓の将来の管理費を他の相続人に請求できないか?」
という相談もよくあります。

基本的には、そのお墓は引き継いだ人の所有物ですので

他の相続人には請求できません。

「だったら費用を支払った相続人が損をするではないか!」
というとそうでもありません。

お墓をもらえる人は

管理費を負担する代わりに、自分のお墓を買わないで済む、

お墓をもらえない人は

管理費負担はないが、いずれ自分でお墓を買う必要がある。

というところで、一応の損得関係は清算されています。


もっとも

「いや自分の妻は
『あなたの実家のお墓には絶対入らない』
と言っているので、結局、別のお墓を買わざるを得ない。」
という場合もありますので

その場合は、精算されていませんが

そこまでは法的なフォローはありません。

生前に、その旨をお父さんなりお母さんに話して

自分以外の人を祭祀承継者に指定してもらうよう

お願いするしかないでしょう。


相続問題については、当事務所のホームページの

こちらをご参照下さい。

民法 896条 相続の一般的効力

金曜日, 10月 8th, 2010
相続に関する法律は『民法』に記載されています。


民法892条には

相続人は、相続開始の時から、

被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。

ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

と規定しています。


”相続開始の時”とは

民法892条上で、死亡したときのことをいいます。

つまり、死亡と同時に、被相続人は権利主体になれなくなるので

生きている相続人が権利を受け継ぐということです。

ですから、とりあえず不動産については

遺産分割が終わっていなくても、法定相続分通りの登記をすることができます。


また、銀行預金は、法定相続分相当額については

法律上は、銀行に請求できます。

(ただし、銀行はすぐには応じません。

”法律上は”ということは、銀行相手に裁判まですれば

勝てるということです。)


ですが、遺言書があれば、その内容が優先し、権利を承継できないこともあります。

また、相続放棄すれば、権利義務の承継はなくなります。

つまり、この条文は

遺言や相続放棄がない場合の原則論が書いてあるということです。


相続問題については、当事務所のホームページの

こちらをご参照下さい。

民法892条 推定相続人の廃除

金曜日, 9月 17th, 2010
相続に関する法律は『民法』に記載されています。


民法892条には
遺留分を有する推定相続人

(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)

が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、
又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、
被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
とあります。


相続欠格の場合(親殺しや遺言書偽造)は

被相続人(亡くなった人)の意思に関わりなく、相続権がなくなります。

(「民法891条 相続人の欠格事由」をご参照ください。)

しかし虐待・侮辱・非行による廃除の場合は、

被相続人の意思によらせています。

仮に虐待があっても、被相続人が

「まあそれはそれ。相続させないとまではいわないよ。」
と思うのであれば、相続権はなくなりません。

ただこれは被相続人の意思だけできめられることではなく

家庭裁判所が最終判断をすることになっています。


「親不孝な息子の○夫には相続させたくない!」
という場合には、遺言書をくとよいです。

遺言書を書くのに家庭裁判所の許可はいりません。

しかし、遺言書に

”○夫を相続人から廃除する”と記載するだけでは

○夫にに遺留分が発生してしまいます。

(「民法882条 相続開始の原因」をご参照ください。)

その遺留分を防ぐために、廃除の制度があります。

(ですから、892条は冒頭から”遺留分を有する”ではじまります。)


でも、○夫が廃除されても、

その子には代襲相続権があり、

代襲相続人にも遺留分がありますので、

○夫の子供が遺留分を主張することまでは防げません。



相続問題については、当事務所のホームページの

こちらをご参照下さい。

民法891条 相続人の欠格事由

木曜日, 9月 9th, 2010
相続に関する法律は『民法』に記載されています。


民法891条では

次に掲げる者は、相続人となることができない。
(1号から4号については後述)
5 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
と規定しています。

「遺言書を偽造したら、相続権はないぞ」
という規定です。


遺言書がある場合、相続は基本的に遺言書に沿って行われます。

遺言書に不満がある場合は

遺言書は偽造だとして遺言の無効を主張するか、

遺言を前提に遺留分を主張するかということになります。


そして、遺言無効の主張が通った場合、

偽造したのが相続人の一人であれば、

遺言書が無効になって法定相続分通りになるだけでなく、

遺言書を偽造した相続人の相続権はなくなります。


しかし遺言を偽造した相続人に子がいる場合、

その子が偽造した相続人にかわって

代襲相続できることになってしまいます。

民法887条 子及びその代襲者等の相続権をご参照ください。)


その場合、遺言を偽造した相続人の相続分が

他の相続人に配分されるわけではなく、

遺言を偽造した一家にも結局遺産がいくという結果になります。


なお、891条は

1号で、被相続人を殺した場合等
2号で、殺されたのに告訴しなかった場合等
3号で、騙したり脅したりして遺言書を書くのを邪魔した場合等
4号で、騙したり脅したりして遺言書を書かせた場合等
について、相続欠格を定めています。



相続問題については、当事務所のホームページの

こちらをご参照下さい。

民法890条 配偶者の相続権

水曜日, 9月 8th, 2010
相続に関する法律は『民法』に記載されています。


民法890条

被相続人の配偶者は、常に相続人となる。
この場合において、第887条又は前条の規定により
相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
と規定しています。


お亡くなりになった方の妻又は夫には

常に相続権があるということです。


「父さんがぼけているのをいいことに
女が勝手に籍を入れて、相続財産を狙っている!」
なんて場合は”婚姻の無効”という争いをしていって

「その女はそもそも配偶者ではない!」
という主張をすることになります。


内縁の妻や夫には相続権はありません。

婚姻関係(財産分与や慰謝料等)については

内縁関係についても、入籍している夫婦同様に保護されます。

しかし

”相続関係については、内縁は入籍夫婦とは違う”
というのが最高裁判所の基本的立場です。


ですから、籍をいれていない場合

残された(内縁の)配偶者は酷なことになりかねません。


高齢の内縁夫婦の場合、

籍を入れられない事情があるとしても、

せめて内妻に財産を遺贈する旨の遺言書を書いておきましょう。


相続問題については、当事務所のホームページの

こちらをご参照下さい。