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知略の文化的評価

水曜日, 2月 19th, 2025

海外ドラマの『ヴァイキング 〜海の覇者たち〜』とか『ゲーム・オブ・スローンズ』では戦争シーンが多くあります。でも、日本人の感覚からすると違和感があります。
いわゆる作戦というか知略というものがないのです。
日本的な歴史ドラマの戦闘では、軍の指揮官自体だったり、その横にいる誰かだったりが知略を働かせて、その成否で勝敗が決るという筋書きが通常です。「卑怯者!」というセリフは、基本的に負け犬の遠吠えの位置づけです。



ところが上記のドラマではそういう気配がありません。見張りもいないようで、突然、予想外の大軍がどこからか現れて勝敗が決するという場面も複数ありました。



あまりに原始的で野蛮な感じもして、そんなもんなんだなあ、と思っていました。



ところが、『インド外交の流儀:先行き不透明な世界に向けた戦略』というインドの外交の重鎮がかいた本で思わぬ意見を目にします。中国は、謀略を駆使する卑怯者を英雄視するような文化であって信用ならない、というような内容です。諸葛孔明あたりでしょうか。
多少、意表をつかれた感じです。日本も中国と同じ文化で、知略を駆使する者は英雄です。



今、マヌ法典という古代インドの様々なルールを定めた本を読んでいます。なかなか面白いのですが、王の生き方を示す部分で
「策略を用いずに行動すべし。決して策略を用いてはならない」
「王は、同等、優勢あるいは劣勢(いずれの敵)によってであれ戦いを挑まれたならば、(中略)、戦闘を避けてはならない」
という感じです。策略は用いず、勝てそうもない戦いも戦うべしということのようです。なるほど、こういう文化的背景なのか、という感じです。
基本的には、このように行動すれば、それで死んでしまったとしても来世で良いことがあり、卑怯なマネをすれば来世でひどいことになるということでなりたっているようです。



こういう文化的背景の人が、『真田丸』なんてみると、卑劣な詐欺師をみているようで、不愉快な感じだったりするのかもしれません。