今年読んだ本2022
水曜日, 12月 21st, 2022ピダハン――「言語本能」を超える文化と世界観
アマゾン流域で暮らす原住民の話ですが、かなり面白かったです。
「直接経験したことしか話さない」という社会的規範があるから、著者の宣教師がキリストの話をしても「お前はキリストを見たのか?」という話になって、「大昔のことなので見ていない」というと「は?」という失笑とともに終わってしまうとか。
それ以外にも特殊な文化的規範が多数あって、異様に幸福そうに暮らしているとのことです。
何か困ったときは「ピダハンならどうする?」と考えるのも無駄ではなさそうです。
ヤノマミ
ピダハンが面白かったので、似たノリで。
想定外の文化のことを知るのは刺激になります。出産直後の子供を育てるか否かの選択権は母親にあるとか。
ただ、どちらかというと物悲しさがあります。現代文明との接触→文明の利器を欲しがる→街にいって物乞いや売春をはじめる というパターンとか。
われわれは仮想世界を生きている AI社会のその先の未来を描く「シミュレーション仮説」
この世界はより高度な世界で作られたゲームなのではないかという話。何でも説明できてしまう理屈なので検証もしようもないし、有用性もないということで自分の中では決着していた理屈です。
ただ、量子力学との親和性は確かに面白いと思います。
コンピュータで世界を生成→世界がビット化(量子化)。
プレイヤーが見る限りにおいて世界を生成→量子力学の観測問題
なんてあたりです。
ルワンダ中央銀行総裁日記
国家といえるのかどうか、というレベルの国の形を整える話で面白かったです。
サラ金の歴史 消費者金融と日本社会
一時期、仕事の中心が対サラ金だったので、ちょっとした懐かしさとともに読んだ見た本。
「サラ金をけなす」というノリではなく、なかなか面白かったです。
GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代
純文学を読んだつもりが水戸黄門だったという感じ。
世界を良い人と悪い人に分けて、最後は良い人が得をするというような。後に読んだ「ストーリーが世界を滅ぼす」ではないが、勧善懲悪のお話に接すると人間の批判能力は減退して、感銘を受けてしまうのだろうか。
21世紀の貨幣論
仮想通貨に興味を持ったあたりで、貨幣そのものについて理解を深めようかと考えて読んでみた本。仮想通貨には触れていないが、なかなか面白かった。
特に、石貨フェイの話(フェイはお金なのだが実際には使わない)は興味深かったです。
戦国の作法 村の紛争解決
ブロックチェーンの世界において、最終的には国家権力による秩序維持は無理なのではないか。ということで、国家権力が弱かった時代の自律的な秩序形成には興味があり、そんなノリでよんだ本。
論じ方のスタイルが独特で一般化した部分には説得力を感じず、断片的な情報の面白さという感じ。
心はこうして創られる 「即興する脳」の心理学
「心の奥底の本当の自分」なんてものはないという話。その場その場で適当なことを言っているだけ、ということです。感覚的にもわかる気がして、説得力があります。
「本当の自分」がどうのとかいって、迷宮に迷い込んでいる人は、その手の概念はオカルトであることを理解することが解決の早道になりそうです。
「子供の気持ち」の類も、同様に幻想なのだろうと思います。
ストーリーが世界を滅ぼす―物語があなたの脳を操作する
人間は勧善懲悪の物語の中で生きていて逃れられないという話。
正直、人間が意見を述べたり議論をしたり、というのは単に「そういったことを言っている自分が好き」で、それをアピールしているだけで、何か正しいことを見極める気などサラサラないように思えていました。この本の説明からすると、これも勧善懲悪の物語の中で正義の味方としての自分を生きる行動ということで理解可能かもしれません。