納得いく説明
ロシアのウクライナ侵攻によって,世の中のニュースがコロナからシフトしました。
人間が何を理解でき,何ができないのか,というあたりは常に興味を持っていますが,コロナのとき同様,色々と発見もあります。
プーチンがなぜウクライナを攻めたのかについて,
頭がおかしいから
とか
私利私欲に基づく悪人だから
なんて説明を平気でしている専門家の類がいるのは,ナカナカです。
上記の説明を冷静に分析すれば,「何もわかりません」というのと同じですから,「ごめんなさい。専門家を僭称するのはやめます」として欲しいところです。
人間が,ある種の説明に納得するかどうかは,一定の手順の証明がなされたかどうかというより,頭の中や気持ちが「スッとする」「なにか落ち着く」という感じが得られるかどうかが大事だということです。
「頭がおかしい」「極悪人」とかいう悪口を言ってみて,気持ちよくなって,正しい事実を発見した気になるという機序が働いているものと思われます。
とはいえ,いわゆる西側的観点から見た今回の出来事の解釈と,ロシア側からみた今回の出来事の解釈とは折り合いがつくのは難しい気もします。現在に起きている出来事ですら,このような状況なのですから,過去の出来事について,歴史認識の折り合いが周辺諸国とつかないのも無理がないかなと思います。もちろん,完全に理解を諦めてしまうと,「あいつらはキチガイだ」モードになってしまうので,分かろうとするフリは必要なのかなと思います。
今回の出来事について,理解の折り合いがつきにくいのは,民主主義についての評価の違いなのかなという印象です。
西側観点はある意味,民主主義原理主義的なところがあって,それに反する体制は悪だし,民主主義の推進は善ということになります。
でも,きっと中国やロシアの指導者からしたら,民主主義でうまくいっている国はごくわずか。民主主義の導入によって国内が大混乱し内戦になる可能性もある。自国をそんな実験的な試みの犠牲にはできない。そうである以上,民主化の試みは危険なので排除したい。というあたりなのかなという気がしています。
こういうことを,「どっちが正しい」とか「よいわるい」とかいう,子供教育用の道徳概念で考えもしょうがないのでしょう。
とはいえ私もだいぶ西側観点に染まっていて,ロシアの動きはうまく理解にしくいところがあります。そんなわけで,第二次大戦での独ソ戦について書いた本を読んでいます。
ドイツは,ソ連を攻めるにあたって,兵站の準備をしっかりしておらず無謀だった,ということのようです。ちょっと攻めれば,ソ連は屈服すると思っていたようです。
そうです。今回のロシアについて言われていることです。
それだけではありません。ありがちな日本人の太平洋戦争反省論でよく出てくる話です。輸送を考えずに無謀にも南方に進出し云々。
どこも,へなちょこな軍隊ではありません。その次代のトップクラスの軍隊です。
そうなると,そもそも人間はこの規模の軍事行動を計画することなんて出来ないのではないかという気がします。結果としてうまくいった作戦は兵站を考えていたのだというのかもしれませんが,展開が変わっていた場合には同様のことになった可能性もあるのでは?と思います。
ちなみに,このたぐいの「日本人は」的な話は多々ありますが,人間全般を研究した海外の本を読んでいると,多くのは人間全体の特徴であることが多い気がします。「日本人は」とかいう説明を受けると,2つか3つ思い当たるところがあって,特に憎しみの対象をギャフンと言わせてやったような気持ちよさが生まれたりして,その説明に納得し,多くの人に流布していくということなのかもしれません。