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アツ

土曜日, 2月 24th, 2018
弁護士の仕事で,重要なことの一つは交渉です。
いつもやさしく仕事をしていて,円満解決といけばよいのですが,なかなかそうも行かないことがあります。
交渉相手なり,交渉相手に関係する第三ターゲットなりが,精神的に負担に感じること,嫌だと思うこと,
そういうあたりを意識させていくことで,事態を動かすことも必要な場合が多くなります。

事態が膠着状況になって弁護士から相談をうけた場合等に,「では,○○と言ってもう少しアツを掛けたらどうか」「こんな行動をとるとアツがかかるのではないか」等とアドバイスすることもあります。

私は「アツをかける」という言葉をごく当然のように使っていて,聞いた方も分かったような雰囲気だったのですが,伝わっていたのでしょうか?
聞いた方は,分かってなくても「ハイハイ」というのは世の常です。
圧力を掛ける,プレッシャーを掛けるということなのですが,なぜ,私は「アツかける」というようになったのでしょうか?
思い起こすと,ラジウスが起源のようです。

ラジウスというのは,その昔,高校の山岳部で使っていたコンロです。
灯油が燃料です。ガスが燃料であれば,十分な圧力が加わった気体が出てきますので,すぐ火がつきます。
しかし,灯油の場合,気化させるために,まず固形アルコールで十分上部を暖める必要があります。
十分暖まっていないと,液体の灯油が噴き出して引火し,(テントの中で)火柱があがるという難物です。
ある意味,ラジウスに火をつけることができれば一人前的なところがありました。
もっとも私は,「こんな不合理な道具はさっさと廃止してガスコンロを導入するべきだ」とか言いながら,
ラジウスの扱い方を覚えたのはだいぶ後だった気がします。

さて,ラジウス上部に灯油があがって火がつくには,ラジウス上部が暖まって気化するだけではだめで,灯油タンク内に十分な圧力が必要です。
その圧力を加えるために,棒のようなものを引っ張り出してポンプする(ポンピングする)という作業も必要になります。
圧力が弱まってくると,なんだか火が弱くなるので,「アツを加える」必要があったのです。

ラジウスを使わなくなってから弁護士になるまで10年の歳月がありますが,突如として,「アツを加える」が復活し,皆様の事件の解決に役立っていると思うと感慨深いものがあります。