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弁護士事務所の人時生産性

月曜日, 9月 2nd, 2013
サイゼリアの正垣泰彦氏が書いた本に,通常の飲食店とサイゼリアの人時生産性の話があります。

普通の飲食店だと2000円から3000円
サイゼリアは生産性を高める努力をして4000円から6000円とのことです。
人繰りを工夫して,店としての生産性を高めることが店長の仕事ということなので,
アルバイトを含めた数字だと思います。

この人時生産性というのは,1人が働いた時間あたりの粗利です。

ここで,弁護士事務所の人時生産性を考えてみます。
弁護士事務所の売上は,仕入れがないので,基本的に売上=粗利です。

そこで,弁護士の稼働時間と事務スタッフの稼働時間を,売上で割ればよいということになります。

司法改革以前の,伝統的な一般民事の個人事務所のイメージとしては
弁護士1人,事務スタッフ1人で売上2000万円というところでしょうか。
ここで,弁護士も事務員も一日8時間,9時から17時まで働くとすると,
平日はだいたい20日なので,1人あたり160時間となります。
これしか働かない弁護士は少数派でしょうが,いわゆる会務・公益活動という
仕事とは別の活動を除くと,この程度かもしれません。

年の売上2000万円は,月あたり約166万円,弁護士と事務スタッフが2人で320時間働きます。そうすると人時生産性は約5200円です。
バイトを含めたサイゼリアの平均的な金額です。

仮に弁護士は事務スタッフの倍の生産性があると仮定して計算すると
事務スタッフの人時生産性は約3400円,弁護士は6800円です。

サイゼリアの生産性が高いということがあるにしても,実際のところ,弁護士事務所はサイゼリアのアルバイトと従業員程度の仕事の対価しかとっていないという事実がここから分かります。

ただ,弁護士の個人的な生産性はかなり差があるので,とても生産性の高い弁護士は大きく稼いでいるという事実はあると思いますが,平均的なところでいうとそんなところなんだろうと思います。

こういう観点からすると,払う側からすると,とても高くみえる弁護士費用が実はぎりぎりなんだ,ということが分かるかも知れません。

少なくとも,一般的な民事事件の相場より大幅に安い法テラスの金額は,かならず無理がでることが分かると思います。法テラスの価格は,通常の3分の1程度になることも多いですから,一般の飲食店のアルバイト程度の対価しか,弁護士の仕事の対価を払っていないことになります。これで,まともな仕事を期待するのは,さすがに無理です。

まあ,根本的な問題は,弁護士の仕事の生産性が低いということにつきます。当事務所としては,ここの抜本的な解決のために,取り組んでいます。

が,現状の弁護士の仕事の生産性を前提に考えると,一見高く見える弁護士費用も,実はすごく手間がかかっていて,全体としてみると,サイゼリアのアルバイトを含めた従業員程度の仕事の対価しかもらっていないことになります。