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弁護士の専門化

月曜日, 4月 22nd, 2013
弁護士の専門化の要請は強いものです。

依頼する側からみれば,専門の弁護士に依頼したいという要望は
もっともなものです。

この場合の専門は,「それしかやっていない」という意味なのか
いくつか専門があってもよいのか?
というあたりのニュアンスは色々かもしれません。

基本的には,その分野の経験豊富で
精通した弁護士に依頼したいということです。

そんなわけで,専門をうたう弁護士HPもおおくあります。
でも,本当に専門かというと,そうでもないことが多いようです。
さらに,日弁連が,専門という表記を控えるよう言っていますので,
(弁護士及び弁護士法人並びに外国特別会員の業務広告に関する指針)
専門を表立って表示している弁護士は
日弁連何するものぞ!としているのか
そういうルールがあることも知らないか(こちらの可能性が高い)
という属性をみてとる必要があります。

いずれにしろ質の高い法的サービスを提供するには
専門化の要請は否定できないのですが,単に専門化すれば
質が高くなるかというと,そう問題は単純ではありません。

仕事の質は,単純化すれば
①その分野についての知識・経験
②弁護士の素質的な能力(頭の良さとか,折衝力とか)
③意欲
で決まります。

そして,単純な専門化を実施すると,②と③が著しく低下して,
結局,仕事の質が低下するというのが,現状と思われます。

まず,現状の法曹界で,例えば離婚だけ,とか,交通事故だけ
という個人法務の一分野だけしか扱っていない法律事務所が
優秀な人材を確保することは,極めて困難です。
報酬で釣れば??と思ったって,こういった分野では
手間に比してそれほど弁護士報酬は高額にはならないので,
報酬で,優秀な弁護士確保というのは非現実的です。

現状,優秀な弁護士が離婚,相続,交通事故といった個人法務分野を
取り扱う状況にするには,多様な事件を扱える優秀な弁護士でありたいし,
精進したいというキャリア欲求に依存するしかありません。

さらに,③の意欲との関係でも,同種の事件ばかり来ることによる
マンネリ化,意欲の低下という問題を考えると,
「それしかやらない」という弁護士の専門化は,
弁護士の質を下げる
つまり,能力の高い弁護士が集まらない,
いても辞めてしまう,
残るのはやる気がないけど,辞められない人ばかり
というリスクがあります。

そういったことを考えて,当事務所では
主任制というものをとっています。

たとえば,離婚主任弁護士は,事務所内でも
相対的に多くの離婚事件を扱い,
その結果,県内でもトップクラスの離婚事件取り扱い実績があるが,
他の事件も,相当数取り扱っている。
他の事件で,例えば交通事故事件で,少しでも気になる点があれば
交通事故主任と協議した上で,最善の方法をとる。
その結果,当事務所で仕事をする限りは,主任分野は当然として
それ以外の分野でも
自らの名で質の高い仕事をすることができる。

現状,個人法務で質の高い仕事をするためには
これが最善と思っています。
将来,どうなるのか。
むしろ,専門化した事務所に優秀な弁護士が集まるようになるのか
等は不透明なところですが,
いずれにしろ,専門化に負けず劣らず
優秀な弁護士が意欲をもって取り組める環境の整備は大事だと思っています。