法テラスの利用について

弁護士の依頼について,一定の資産・収入以下の人のために法テラスの法律扶助という制度があります。

そこで,法テラスを利用した上で,当事務所に依頼したい,というご連絡をよくいただきます。
しかし,当事務所では,そのようなご要望はお断りしています。

法テラスの法律扶助に対するスタンスについては,各弁護士・各事務所の正義感や思想に
直接に関わる部分があるので,色々だと思います。

当事務所で,法テラスを利用しての依頼をお断りしている理由は次の通りです。

法テラス利用の場合,弁護士費用は,通常の場合の弁護士費用の場合より
大幅に安くなります。

例えば,通常60万円の件が,法テラスだと30万円程度が弁護士報酬になります。
そして,弁護士は通常に依頼を受けようが,法テラスで受けようが,仕事の仕方を変えることは
ないことが普通です。

そうであれば,30万円の弁護士報酬で仕事ができるのであれば,
60万円の弁護士報酬はぼったくりです。
もし,60万円の弁護士報酬が適正妥当なのであれば,30万円では赤字受注になります。

通常の民事事件の依頼において,弁護士業務の現状からすると
依頼者の側からすると費用は高く感じますが,弁護士の側からすると
かなりきついと感じることが多いのが通常です。

当事務所の通常の弁護士費用も,当事務所の考える仕事の質を維持する中
そのぎりぎりのところで定めています。

その結果,当事務所が求める水準の弁護士業務を考える場合
法テラスの弁護士費用では,赤字受注にならざるを得ません。

赤字受注の仕事を組織的・継続的に受けることになれば
この赤字部分のツケを必ずどこかにすことになります。

弁護士に加重労働を強いるか
そうすると,弁護士業務の水準は当然下がります

弁護士の給料を下げるか
そうすると優秀な弁護士は当事務所を去り ,当事務所の弁護士業務の水準は下がります。

他の事件の手を抜くか
当然弁護士業務の水準は下がります。

いずれにしろ必然的に,通常の費用を支払っていただいている依頼者へ
法テラス業務のツケを回すことになります。

これは,私の考えとしては,著しい不正義以外の何者でもありません。

そんなわけで,事務所全体の方針としては,原則として,法テラス希望の依頼者はお断りしています。

ただ,個別の弁護士については,法テラスの社会的意義に賛同して,
法テラスで行われている法律相談を手伝い,そこでお会いした
依頼者から法律扶助で受任する者も多くいます。
個人の時間を犠牲にして,通常受任での依頼者に影響が出ない範囲で,
法テラスの仕事をしているわけです。
もちろん,その場合は,当事務所の事件として,当事務所の水準で仕事をします。

これは,事務所としても望ましいことだと考えています。
ただ,事務所全体として組織的に,法テラス希望の依頼者の受任を許容すると
他の依頼者にツケを回すことになるため,当事務所をご指名いただいての
法テラスの利用はお断りしている次第です。

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