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判例。判例。

木曜日, 11月 24th, 2011
法律相談をしていて、相談者から判例がどうのこうの、と言われることがあります。
この件について、判例はどうなっているのか?
とか
判例がそうなんているので仕方がないんですかね
とか。

まあ、正直どうでもよいので、「さあ、どうでしょうね」なんて言いますが、
別にごまかしているわけではありません。

だいたいこういう場合に、「判例、判例」なんて言っているのは、
下級審の裁判例、つまり、最高裁判所の判断以外の裁判を言っていることが多いようです。

大事さの順番で言うと、
①一番大事なのは、実質的に結論が妥当かどうか
②次に、法律の条文に書いてあること、最高裁判所が何と言っているか、

で、ずっと劣って
③下級審の裁判所や学者が何を言っているか
というのが私の感覚です。

何といっても①が大事ですが、結論が妥当かどうかは
様々な観点から検討(当方の立場だけでなく、相手の立場、さらにルールとして一般化できるか等)
が必要なので、そのセンスが法律家として一番大事なところだろうと思います。

で、①さえしっかりしていれば、通常は変な結論を導く条文や最高裁判所の判例はあまりないので、
概ね大丈夫ということになります。
仮に、形式的にみて、変な結論になりそうな場合は、法律解釈で妥当な結論に持っていくというのが
通常のあり方です(そういう意味で、漫画チックな法律の抜け穴というものはほとんどありません)
でも、たまに①で妥当と思ったことに反する法律や最高裁判所の判例があったりすることもあり、
その場合に、①の考えが本当に正しかったのかと、再度、考えることになります。

で、依頼を受けた件等で、念入りに検討する必要があるときに、
③の下級審の裁判例を利用して、検討した価値判断に漏れがないかチェックする。
という感じでしょうか。

実際、裁判の場では、下級審の裁判例を裁判官に見せたところで、
その裁判官が違う考えであれば、
「私はそういう考えをしませんから」
「まあ、色々な考えがある点ですからね」
と言う程度の扱いのことが多いです。
もちろん、裁判官も色々な方がいますから、他の裁判官の判断を参考にしたがる
人もいますが、少数派の気がします。

下級審の裁判例調査を重視するかのように思われてしまうのは、
日本の裁判経験が少ない国際派弁護士がアメリカ流で判例調査が弁護士の仕事であるかのように吹聴しているからか?
ホームページの情報を出すネタとして、裁判例紹介が楽だからか?
情報収集が好きな人が、自分の存在価値を高めるために、こういう裁判例を知らないようじゃ弁護士失格だね!
何て言っているからか?

よく分かりません。

私自身は、事件の見通しをお話しする上では、①の実質的に妥当だという結論を
自分がどの程度の確率で裁判官を説得する自信があるか、とい観点で決めていることが多いです。
大半の裁判官を説得できるかな、
半分位の裁判官なら分かってくれるかな、
頑張れば柔軟な考えの裁判官なら分かってくれるかも
なんて具合です。

なお、裁判例不勉強の言い訳で書いているわけではありません。
しっかり下級審裁判例も勉強しています。
でも、それは「こういう裁判例がある」という知識を出すためではなく、
①の感覚をブラッシュアップするためです。