暗号資産の所得税制改正について


暗号資産(仮想通貨)の所得税について、分離課税の方向で議論がされるそうです。
 金融庁の「貯蓄から投資」を促す姿勢鮮明に、暗号資産税改正等



基本的には業界団体の要望に沿った形のようです。
 暗号資産税制改正求め金融庁に要望所提出



法人課税については、大問題だったので改正方向はとてもよいと思います。
所得税の分離課税についても、そのほうがよいです。



ただ、所得税については、もっとすべき改正があると思います。現状だと、かたく考えた場合、ブロックチェーンベースのゲームなり、メタバース等を利用すると、ちょっとした操作をするたびに、細く複雑な暗号資産の帳簿をつけなければならないことになります。
まともにやるには煩雑過ぎますので、課税リスクを覚悟しながら適当にやるか、ブロックチェーンベースのゲームなりメタバースはやめておくか、ということになってしまいかねません。
つまり、日本人はWEB3.0はやめておけ、というような状況なわけです。



パブリック・ブロックチェーンベースのゲームなりをするには、何かをするたびに、ガス代等としてイーサリアム等が必要になります。そして、イーサリアムの値動きにあわせて、売却益なり売却損、その上での計算上の単価を出す必要があります。たとえば、

1ETHが20万円のときに、0.5ETHを10万円で購入します。
1ETHが30万円になったときん、ゲームアイテムを0.01ETHで購入します。手数料が0.005ETHかかりました。
このとき、0.015ETH分は20万円から30万円に値上がりした分の売却益が出ますので、1500円の売却益(これは課税される)ということになります。
さらに、1ETHが35万円のときに0.2ETHを購入してETHを補充します。
この場合、手持ちのETHの価額は、20万円の簿価の0.485ETHと、新たに35万円の0.2ETHを加重平均をとって
 (20万円✕0.485+35万円✕0.2)÷(0.485+0.2)というような計算をします。



こういうことを、やり続ける必要があるということです。



エクセルを使えばある程度できますが、そうまでして、ブロックチェーンゲームをしようとは、普通は思わないと思います。



私自身もブロックチェーンに興味をもって色々やりはじめたときは、相場があがり調子だったので、実験的に送金すしたり色々するたびに売却益が発生して税金も発生するような状況でした。でも、ある段階で暴落したので、一気に赤字になって、とりあえず実験段階ではたっぷりの赤字で、今年は税金は発生しなさそうです。私は勉強がてらなので色々帳簿つけもしましたが、まあ、まともにやる気のする作業ではありません。



業界団体なりが、この問題を認識しながら要望として後回しになっているようです。
結局のところ、業界団体も役所も、現状は、暗号資産を本当にWEB3.0的のエッセンス的なものととられているのではなく、投資・投機的手段として考えているに過ぎないといえます。
または、うがった見方をすれば、ブロックチェーンゲームやメタバースにしろ、日本人相手にした閉じたプライベートチェーン的なものを作りたい人を中心に、要望がなされているのではないかという気もします。ガラパゴス的Web3.0を目指す会といったところでしょうか。



さらに、値上がり益を目指すのではなく、定期的な収入を目指すという面ではステーキングがとても重要です。従来、ブロックチェーンはプルーフ・オブ・ワークに基づきマイニングによって支えられていました。しかし環境負荷が大きいことからプルーフ・オブ・ステークが主流になってきています。。これはステーキングといってお金を預けてブロックチェーンの基盤を支えることで、その対価として5%から15%程度の金利的な収入を得るというもので、少額から誰でも参加できます。
ところが、このステーキング、毎日金利が発生するのです。そのため毎日収入の帳簿付けが必要になります(収入だけでなく、仮想通貨の価格変動も毎日チェック)。有料での計算サービス()を利用しないととてもでないとやってられません。ただ、交換所を介さずにダイレクトにステーキングする(これが本来の姿)となると、こういうサービスも利用できないのではないかと思います。
果たして、税金の申告のためにこんな煩雑な事務作業をする必然性があるのが極めて疑問です。日本円に替えたときに所得発生とすれば済む問題ではないかという気がします。
これも、業界団体等を構成する日本の交換所の大半がステーキングサービスを提供していないことから、税制改正で要望されていないのではないかという気がします。



さらに、ブロックチェーン基盤でのWEB3.0のゲームとなれば、ゲーム内で稼いだ通貨が仮想通貨になってきます。昨年あたりから話題になっている。play to earnというものです。その場合、ゲーム内のお金のやりとりすべて帳簿をつけろ、というのが現在の税務上の要求ということです。もう、やってられません。



この問題が難しい理由はいくつでも挙げられると思いますが、WEB3.0が普及しつつある国では、そういう税制になっていないのでしょうから、日本の単にそうすればよいだけです。グローバル化した制度のなかで、そのような調整が必要なのは当たり前で、その気になればよいだけのことと思われます。



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